鳥の愛はその嘴のその奥のふるえる舌からまっすぐの声   宮田知子

 

 

秘書さんとマリオネットの真似をしたむくいが二日間腰にくる   山川藍

 

 

血液の溜まりいること誰も知らず駆けて生きいる父の脳(なずき)に   浅井美也子

 

 

どこからかひかり差し込み昨晩のモーゼルワインのみどりを照らす   伊藤いずみ

 

 

デパートの光の中に入り行けど一つとしてなしいま欲しきもの   大谷宥秀

 

 

青空を駆けたるミサイル揚げたてのポテトコロッケの下敷きとせり   小原和

 

 

不吉なること思いながら手洗えば鏡の奥を母は右へ行く   加藤陽平

 

 

福寿草は金貨のように輝けり なんか、私設の祠?のそばに   北山あさひ

 

 

声あらば美しく泣かん毎年の桜流しに耐える花びら   木部海帆

 

 

夜桜の写真ばかりを護符のごと撮り溜めてゆく小さき画面に   後藤由紀恵

 

 

これまでの嘘の世界を抜け出して今の気分は青という次女   小瀬川喜井

 

 

いくまいも花びらをのせ深い沼のようにしずもる黒いボンネット   佐藤華保理

 

 

おいしくて掻つ込んでをりあいちやんと呼ばるる人の麻婆豆腐   染野太朗

 

 

マネキンは腕を外して脱がされるその生ぬるき春の体温   立花開

 

 

うす雲の奥にあるのか昼の月薄き給与の明細照らす   田村ふみ乃

 

 

ふくしまに花見山ありグーをしてパッと開いたような春きて   富田睦子

 

 

るなぱあくにつぽんいちなつかしいゆうえんち もくば一回10円なり   広沢流