作品1
呼気吸気意識にありて見る空を胸ふくらまし鳥の飛びゆく 橋本喜典
十八号のせまりてくるや昼下り甲走【かんばし】りゆくひぐらしのこゑ 篠弘
繋ぐ手に心もつなぎお開きのならはしとなる「故郷」歌ふ 関とも
義兄の兄今年百歳をふたつ越湯自転車に乗るはやめているらし 小林峯夫
千の風ならば吹き来よ施餓鬼会を汗にまみれて僧は経誦す 大下一真
ウサマ・ビン・ラーディン在らず逝く夏のガーゼは裂かれ空の鱗雲 島田修三
偉さうな口を叩いてゐたぢやねえか昨日の呑み屋の俺のことだよ 柳宣宏
もう会へぬ人かと思ひしと我を言ふ病気が病気なのでといふ目に 三浦槙子
三冊の本携へて来し茶房いづれも読まず空見てすごす 井野佐登
ワンピース姿となれる夏の妻こころと体の輪郭失せぬ 柴田典昭
約束を果たすごとくに降りはじめ吹き込む雨の飛沫に濡れる 今井恵子
子より若く子より凛々しき丸眼鏡記憶あらねどわたくしの父 曽我玲子
まひる野集
黄の貌がひまわり畑に咲きつづく友よみちのくももう夏ですか 広坂早苗
生きているただそのことが大仕事網戸を開けて猫の入りくる 市川正子
夕狩にいで立つごとく勢ひたる日日の無きがに犬は衰ふ 寺田陽子
黴臭き地下書庫に来てNatureの活字を追えば眼は悦ぶ 高橋啓介
マイナーな競技だなどと言はれても乙女の笑顔つゆ揺るぎなし 柴田仁美
今月で術後五年になりますと告げつつ老いの頬は崩れつ 升田隆雄
日の終はり頬に触るれば壁土のやうに埃と塩の落ちくる 麻生由美
呼気吸気意識にありて見る空を胸ふくらまし鳥の飛びゆく 橋本喜典
十八号のせまりてくるや昼下り甲走【かんばし】りゆくひぐらしのこゑ 篠弘
繋ぐ手に心もつなぎお開きのならはしとなる「故郷」歌ふ 関とも
義兄の兄今年百歳をふたつ越湯自転車に乗るはやめているらし 小林峯夫
千の風ならば吹き来よ施餓鬼会を汗にまみれて僧は経誦す 大下一真
ウサマ・ビン・ラーディン在らず逝く夏のガーゼは裂かれ空の鱗雲 島田修三
偉さうな口を叩いてゐたぢやねえか昨日の呑み屋の俺のことだよ 柳宣宏
もう会へぬ人かと思ひしと我を言ふ病気が病気なのでといふ目に 三浦槙子
三冊の本携へて来し茶房いづれも読まず空見てすごす 井野佐登
ワンピース姿となれる夏の妻こころと体の輪郭失せぬ 柴田典昭
約束を果たすごとくに降りはじめ吹き込む雨の飛沫に濡れる 今井恵子
子より若く子より凛々しき丸眼鏡記憶あらねどわたくしの父 曽我玲子
まひる野集
黄の貌がひまわり畑に咲きつづく友よみちのくももう夏ですか 広坂早苗
生きているただそのことが大仕事網戸を開けて猫の入りくる 市川正子
夕狩にいで立つごとく勢ひたる日日の無きがに犬は衰ふ 寺田陽子
黴臭き地下書庫に来てNatureの活字を追えば眼は悦ぶ 高橋啓介
マイナーな競技だなどと言はれても乙女の笑顔つゆ揺るぎなし 柴田仁美
今月で術後五年になりますと告げつつ老いの頬は崩れつ 升田隆雄
日の終はり頬に触るれば壁土のやうに埃と塩の落ちくる 麻生由美