7月号の作品②

<作品Ⅱ>

満面に笑みがあふれて孫のおしゃべりは明快に意味不明に   中沢隆

<七月集>

はればれと鶯ふいに声あぐるパントマイムで夫に知らせる   内田湫子

もう愚痴を聞いてもらへぬ母の腕ささへて桜の花を仰げり   西川直子

ほの暗き書庫たちまちに幼らの妖怪あそびの場に変じたり   坂井好郎

<作品Ⅲ>

わが裡に鬼と仏の二者の住みシャッフルするたび鬼の出でくる   服部智

我こそはバジルであると主張して枯れてもわが手にしるく香れり   小原守美子

胸をはり職をなのれる町だった隣家の梅のわかやぐ匂ひ   井出博子

おや指でひざの裏側押してきていたくないっていうと笑った   小林樹沙

春の夜の本屋でぶつかる革ジャンの女【ひと】の提げたる赤福の包み   稲熊昌広