マチエール


後ろ足すこし伸ばして斑猫の門扉をくぐり視界より消ゆ   後藤由紀恵


叱れども泣けども生徒(こ)らの眼球の広がる白をわが止められず   染野太朗


大声にオーイ若者と呼ばれたり安部公房の戯曲のごとし   小島一記


めくるめく楽しき遊びか子は走り雑踏のすきま渡ってゆく   木部海帆


津和野へと誘われし時津和野とう友がいたことふいに言われる  山川藍


かの人は私を知らぬわれはただかの人の歌を口ずさみたり   川嶋早苗