マチエール欄より
血縁の家族そろいて墓参する夏の午後ありなにかまぶしく 後藤由紀恵
父の揚げた茗荷の天麩羅さくさくと旨しも父よ長生きするな 染野太朗
じっとりと夏の重さを帯びる子を抱きしめたれば立ち上がる雲 木部海帆
汗臭い女の横の吊革にたびたびわれのシャツを嗅ぐわれ 小島一記
どの人もさびしき心を黒点のように抱える残暑のまちに 富田睦子
八月は子どもらの季語噴水のしぶきを浴びてきらきらしかり 米倉歩
子の足は夜も眠らず わが足を少しずらせど追いかけてくる 小瀬川喜井
ガラス越し子らとイルカが向かい合う君らまとめて哺乳類だね 山川藍
ぱつりぱつり蝶裁つごとくパイプ椅子畳みつづける夕暮れのあり 小川陽子
遠ざかることで近づくこころあり筆圧強き友の絵はがき 大谷宥秀
離乳食レシピを棚に戻したらにわか妊婦の魔法とけたり 稲本安恵