27話

スーパーや、道で
ひっくり返って泣いている子ども…
今もいるのかな。

幼稚園の同じ学年でも
次男だけだった。
自分の思うように
いかないと
何時間でもその場で
ひっくり返って
泣き続けた。

喘息の発作を
毎晩おこしていた。
咳をすると
腹筋が痛いみたいで
「たすけて〜たすけて〜」と
叫ぶ。
静かな夜に助けてーという 
子どもの声。
それがまた、
でかい声なのだ。

虐待と通報されたらどうしよう💧
と、ひやひやして
泣き声に苛立っていた。

24時間、
次男の泣き声を
聞かない日は
なかったくらい
毎日毎日
よく泣いていた。

睡眠不足に
泣き声ノイローゼ。
イライラがつのりすぎて
叩いてしまったこともあった。
叩いたら、
自分の手も痺れて痛かった。

次男が大学生になった頃のことだ。

駅で電車を待っていた私の耳に
ある家族の会話が
きこえてきた。

小さな女の子に向かって
お父さんが
怒って叱りつけていた。
きいていると、
さほど大した理由ではなく
そんなに怒鳴らなくても…
と思う。
もちろん
その時だけの事では
ないのかもしれない。
親の気持ちもわからなくはない。

小さな女の子は
うつむいていて
お父さんが怖くて
いい返すこともできないのが
わかった。

途端、バシッとお父さんが
女の子の頭を叩いた。

泣きたいのを我慢して
耐えている姿を見た時、
胸の奥がぎゅーっと
痛くなった。

私の中にお詫びがわいた。

家に帰ると
次男がいた。
私はすぐに
彼のところに行って
今見てきた光景の話をした。
そして、最後に言った。

"お母さんもあなたが小さい時
叩いたことあったよね。
どんな理由があったって
小さな子を叩くことは
やっぱりあかんわ。
きっと怖かったよね。
ほんとにごめんね。"

思わず、
口から溢れ出した言葉を
次男はだまってきいていた。

「僕、
ほんとにひどかったからなー。
叩きたくもなるで。
お母さん、ほんまに
よく僕みたいな子ども
育てたよなーー」

ほんまやで、と
いいたくなるのは
おいておいて、

私は、あの瞬間の 
小さな女の子が感じた
怖さを
自分の中に感じて
謝っても謝っても
足りないような気持ちに
させられていた。

と同時に
あの女の子は
子どもの時の自分だった。
私は、ずっと
強い親が怖くて
いつもだまって
小さくなっていた。

でも次男は、
ならなかった。
私がどんなに
大きな声をだして
言うこときかせようとしても
きかなかった。
いつも
さらに泣き続け
暴れ続けた。
自分の中で
おさまりがつくまで。

私ができなかったこと
本当はやりたかったことを
次男は姿でみせてくれた。

だから
今の私があるんだなって思う。