台風で

ふと思い出したのは

父のこと。


台風がきていたその日、

大学生だった私は

サークルの練習日だった。

両親は、子ども時の体験からか

台風には毎回かなり慎重だった。


「台風をあまくみたらあかん!」

と、いつも言っていた。


その日も家で待機していたものの、

結局台風はとおり過ぎ

空も晴れ間がみえてきた。


もう大丈夫だろうも

友達と待ち合わせをして

家を出た。


途中まで行くと

突然歩いている私のとなりに

車が止まり、

父が車からおりてきて言った。


「まだウロウロしたらあかん!

さっさと乗りなさい!」

と怒ったように言われた。

こんなに青空なのに、

大丈夫だよ、と言っても

聞く耳をもたない父だった。


結局、車にのり

家に帰った。

私以外の仲間はみんな集まったと聞くと

頑固な父に腹がたった。


台風がきて、

呑気な子どもたちに

気をつけるように言う自分の中に

心配症だった両親を僅かに感じる。


うるさいと思うほどに

守ってくれる人がいたことが

今では懐かしく

ありがたい。