リハビリ病院にいる母を訪ねた時のことです。
脳梗塞で倒れてから、記憶がまだ曖昧な母は、
昨日きてくれた人のことも
「きてない」といったり、
食事が終わっても「食べてない」という
時もあります。
その日のリハビリ担当は若くて誠実そうな、
感じのいい青年でした。
リハビリ室に移動する準備をしながら彼が母にききました。
「ご飯は食べましたか?」
母はいいました。「食べてない」
「ここにきてから一回も食べたことない」
(また言ってるわ…)と思いました。
(さっき食べてましたよー、きっとそう
言われるんだろうな、)と、思っていました。
でも、その青年はこう言ったのです。
「そうなんですか。
それはおなかがすきますねー」
母は何もいいませんでした。
普通にすぎた時間でした。
でも、彼のその言葉は後々まで私の中に残りました。
優しいひとだなーと思いました。
でも、思い出してると、なんだか泣けてきました。
その言葉のあたたかさがしみてきました。
彼は、母の言ってる言葉と対話していたのではなく、母そのものに寄り添ってくれていたのです。
もし、私が「さっき食べたやん」と言ったとしたら、その裏にあるのは、食べたのに覚えてないの?という無意識の責め…
それは一瞬でも相手に、覚えてない自分はだめなんだ、と思わせてしまうかもしれません。
そんなことをして、何がいいことがあるんだろう?
そう思ったとたんに、人生の中でたくさん、たくさんひとに対して、子どもに対してもやってきた、
言葉の裏に小さな責めがあった…
ということが思いだされて、申し訳ない気持ちが湧き上がってきて、ごめんなさい!という思いが胸の中にいっぱいになりました。
目の前に起こることは、全て自分にみせてもらってること、
ほんとにそのとおりだなって思います。
