病院の待合いの合間に、うつらうつら、『仏教』雑学3分間ビジュアル図解シリーズ、末木文美士監修PHPの、第3章・大乗仏教の数ページpp.59-71を読み返していました。それぞれ、
大乗仏教の形成「菩薩の理想像を追求した新しい改革運動」
大乗の仏と菩薩たち「無数の仏たちと無数の菩薩たち」
般若経「現存最古の大乗経典を含む一大経典群の総称」
般若心経「空のエッセンスを凝縮した一番短い般若経典」
維摩経「空を体得した在家の菩薩が主人公」
法華経「永遠の仏が説く統一的真理」
とあります。これらの内容を、補いを付しての抜粋、要約、そして新たに作文してみました。
<大乗仏教の興起>紀元前1世紀ころ、大乗仏教が誕生します。大乗仏教は、仏陀・釈迦牟尼世尊と同じ悟り(= 阿耨多羅三藐三菩提)に到達することができる、いいかえれば、仏の悟りを求めて修行を行うという点で、革新的な仏教でした。
<大乗経典の制作>大乗仏教の修行者たちは三昧(samādhi. 心一境性、精神集中の状態)の中で、仏・釈尊に直接会って教えを聞くという体験をし、それを経典としてまとめました。大乗仏典は紀元前1世紀ころにから、以来千年以上にわたって制作されていきます。大乗仏典は前期・中期・後期の三つに分類されます。
<菩薩>大乗の修行者は“菩薩”(bodhisattva)と呼ばれ、仏と同じ悟りを求める者のことです。それは本来、誓願し、発心(= 発菩提心)してより、悟りを開くに至るまでの修行時代のお釈迦さまを指していました。大乗仏教になると、出家者も在家信者も、みずからも菩薩であると考えるようになります。なお、菩薩、大乗(摩訶衍)、そして菩薩乗という語の用例、その歴史的展開についても考える必要があるようです。
<諸仏>初期仏教は、お釈迦さま以前の、過去仏の存在(「過去七仏」など)、そして未来仏(弥勒)の出現を説きました。大乗仏教になると、経典の制作過程において、釈迦牟尼仏のほか、過去仏、未来仏に加えて、多くの諸仏がそれぞれの仏国土において、そして現在同時に存在する、との理解に至りました。西方・極楽世界の阿弥陀如来、東方・妙喜世界の阿シュク如来、そしてその中心としての、毘盧遮那仏などです。後に浄瑠璃世界の薬師如来なども加わります。
<文殊、観音>文殊は智慧の菩薩です。文殊は、幼き釈尊を指導したといい、そのため、文殊はすべての仏の父であり母であるといわれます。観音さまは、人びとの救済のため、願いをかなえるため、さまざまな姿をもってあらわれるとあります。その中には、ヒンドゥー教由来の天部の神々のほか、婦女、童男童女も含まれます。
<般若経、般若心経>「般若経」とは、『〇〇般若』という経名をもつ、数多くの経典の総称です。共通するテーマは「空・般若波羅蜜多」ですが、般若経典は、紀元前100年ころ、原型となる般若経典が登場し(原始般若経典の形成)、第二段階として、その内容がどんどん長くなります(経典の増広期『小品般若』、『大品般若』など)。そして一転して、その内容が凝縮・縮小化されるのが第三段階(300年~500年ころ)。そして密教化の時期(500/600年~)をむかえます。般若経典は、大乗仏教の出発点であると同時に、大乗仏教の思想的展開を支えた経典でもあるのです。『般若心経』は、その第三段階の制作と考えるのが妥当なようです。
<般若心経>『般若心経』の「心」の原語は、フリダヤhṛdayaです。それを「核心部分」の意味と理解し、「空・般若波羅蜜多」の思想が、般若経典群の中でももっとも簡潔にまとめられている、それが『般若心経』であるといいます。『般若心経』では、部派仏教で“仏説”として説かれる五蘊・十二処・十八界の存在論的な体系、十二支縁起、四諦の関係性を脱構築し、それらを大乗仏教思想として、すなわち、新たなる“仏説”として再構築します。またここでのフリダヤhṛdayaはマントラmantra(呪)と同義であり、般若波羅蜜多、そして般若波羅蜜多を説く「般若経」が真実語(satya-vacana)の一種「能除一切苦、真実不虚」として機能するとの理解から、それを「羯帝羯帝波羅羯帝 波羅僧羯帝菩提僧莎訶」の心呪として具体的に示しています。実は『般若心経』では、この心呪がもっとも大事なのです。
維摩経「空を体得した在家の菩薩が主人公」
法華経「永遠の仏が説く統一的真理」
については、またの機会にまとめてみます。僧侶研修者用の学習資料として作文しました。