理趣経 第六段 得益段(歎徳) 四種智印の功徳

 

金剛手 若有聞此理趣 受持讀誦作意思惟 得 一切自在 一切智智 一切事業 一切成就 得 一切身口意金剛性一切悉地 疾證無上正等菩提

 

金剛手よ、若し此の理趣を聞いて、受持し、読誦し、作意思惟すること有らば、一切の自在、一切の智智、一切の事業、一切の成就とを得、一切の身と口と意と金剛性との一切の悉地を得て(あるいは、一切の身口意金剛性の一切悉地を得るをもって)、疾く無上正等菩提を証するなり。

 

『理趣釈』によれば、功徳と四種智印の関係は、2)語印 一切自在、3)心印 一切智智、4)金剛印 一切事業、1)身印 一切成就 となります。一方、ĀGによれば、1)大印 すべての悉地(siddhi 成就)、2)語印(= 法印)すべての円満(sampatti自在)、3)三昧耶印 すべての智(jñāna 智智)、4)羯磨印 

あらゆるなすべき活動(kāryā 事業)となります。列順(列挙の順序)が異なりますが、対応関係は概ね同じです。なぜこのような異なりが生じているのか、その理由は不明、あるいは爛脱とします。

 

なお、「得一切身口意金剛性一切悉地」の訓読については、四種智印の統摂とするか、総括としてもういちど唱えたものとするかの二通りがあります。霊城先生『講録』p.162-163 参照。梵文を参照すれば、「一切悉地」は、あらゆる最勝の悉地(sarvottama-siddhi)とあり、「最勝のuttama」という形容詞が加わっています。ですから、等位・連結的接続詞の ca は、その機能通り、第五の功徳を示している。そしてそれが不空訳に「得」が二つ示されていることの意図でもあるのです。したがって、ここでは「統摂」(総摂)と理解しています。

 

『理趣釈』「身印を持するに由て、一切の成就を得、語印を持するに由て、一切の口の自在を得、心印を持するに由て、一切智智を得、金剛印を持するに由て、一切の事業を得皆な悉く成就することをもって、疾く無上正等菩提を証すべし。」

 

[T] 19 yaḥ kaścid vajrapāṇe imaṃ dharmaparyāyaṃ śroṣyati dhārayiṣyati vācayiṣyaty uddekṣyati bhāvayiṣyati sa 1) sarvasiddhīḥ 2) sarvasampattīḥ 3) sarvajñānāni 4) sarvakāryāṇi sarvakāyavākcittavajratva-sarvottama-siddhiṃ ca pratilapsyate / kṣipraṃ cānuttarāṃ samyaksambodhim abhisaṃbhotsyata iti //

金剛手よ、誰かあるものが、この法門(tib. prajnaparamita-nayam)を聴聞し、受持し、読誦し、教示し(uddekṣyati)、修習するであろう、その者は、1)すべての悉地、2)すべての等至、3)あらゆる智、4)あらゆる事業と、一切(如来)の身口意金剛性(一切の身語心が金剛たること。すなわち、一切如来たること)である、あらゆる最勝の悉地を獲得するであろう。そして、速やかに無上正等菩提を現等覚することになるであろう。