三帰依・十善戒について お話しための資料として作成しました

 

三帰・五戒・八禁の頌、十善の嗢陀南 『十住心論』巻第二 

 

まずは『十住心論』からの偈文です。

 

(314c06)三歸・五戒・八禁の頌

仏・法・僧の三宝に対する帰依の意義・必要性、外書の五常にも類する、五戒(不殺生、不偸盗、不邪淫、不妄語、不飲酒)、優婆塞・優婆夷としての、八戒(五戒に、正午を過ぎて食せず、等の三つを加えます)を受持することの功徳がまとめられています。

 

嬰兒の母、在らず 犢子の、所依なきは

必ず死せんこと、疑慮なし 犲狼(さいろう)悉く走り歸(そむ)く

衆生、佛に歸せざれば 魔鬼總て來り圍む

己を剋(せ)めて三寶に投ずれば 諸天、敢えて違せず

 

五常持って犯さざれば 來葉に美名、飛す

八禁能く修習すれば 人天に光暉を作す

三途何ぞ必ずしも怖れむ 諸佛は毎(つね)に威を加えたもう

(来世の)昇・墜は、他の意にあらず (この世の)衰・榮は、我が是非なり

 

(316a05)次に十善を修することを明かさん 十善の嗢陀南(udāna)

十善戒の内容と、その功徳が説かれます。

 

殺(せつ)と怨恨(おんごん)とを離れて利慈を生ずれば 端正・長命にして諸天、護る

盜せず知足にして、衆生に施(ほどこし)すれば 資財、壞せずして天上に生ず

邪婬を遠離して[異性に対する]染心なければ (中略) 是れ円寂の器にして生死を出づ

 

妄語せざる者は、常に實言なり 一切皆な信じて供すること王の如し

兩舌の語を離れて離間することなければ 親疎堅固にして怨の破するなし

諸もろの惡口を離れて柔軟の語なれば 勝妙の色を得て、人皆な慰(やす)んず

道義語を思うて綺語を離るれば 現身に即ち諸人の敬を得

    

他の財を貪せず、心に願わざれば 現に珠寶を得て後に天に生ず

瞋を離れて慈を生ずれば一切に愛せらる 輪王の七寶、此れに由りて得

八邪見を離れて正道に住すれば 是れ菩薩の人なり、煩惱を斷ず

是の如くの十善の上・中・下は 粟散(ぞくさん)と[四]輪王と三乘との因なり

 

まず、『十住心論』からは以上です。次いで、臨済宗 総本山円覚寺さま 横田南嶺さまの「今日の言葉」(2020.10.31)布薩(ふさつ)により、十善戒を皆で唱和するための文章をご紹介します。

 

第一・不殺生(ふせっしょう)「すべてのものを慈しみ、はぐくみ育て」、

第二・不偸盗(ふちゅうとう)「人のものを奪わず、壊さず」、

第三・不邪婬(ふじゃいん)「すべての尊さを侵さず、男女の道を乱すことなく」、

第四・不妄語(ふもうご)「偽りを語らず、才知や徳を騙(たばか)ることなく」、

第五・不綺語(ふきご)「誠無く言葉を飾り立てて、人に諂(へつら)い迷わさず」、

第六・不悪口(ふあっく)「人を見下し、驕(おご)りて悪口や陰口を言うことなく」、

第七・不両舌(ふりょうぜつ)「筋の通らぬことを言って親しき仲を乱さず」、

第八・不慳貪(ふけんどん)「仏のみこころを忘れ、貪りの心にふけらず」、

第九・不瞋恚(ふしんに)」「不都合なるをよく耐え忍び怒りを露わにせず」、

第十・不邪見(ふじゃけん)「すべては変化する理を知り心を正しく調えん」。

「私達は、仏陀釈尊の慈悲のこころを学び、慈悲のこころを実践するために修行いたします。……一人一人の仏心仏性を拝みあい、ここに仏陀釈尊の弟子として恥じることのない、敬愛和合の道場を築くことを誓います」。