昨日、一昨日と寺内で合同法要があり、たくさんのお方が法要に参加されました、とのこと。私は、午後三時過ぎお寺に戻り、皆さまが戻られたお堂の中、お施餓鬼の作法と読経を行いました。お施餓鬼の作法および、その作法の典拠となったお経については、

 

明石の禅寺大蔵院(臨済宗南禅寺派)HP 開甘露門 現代語訳

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極楽浄土~仏教用語集 浄食加持偈(2017/06/30)

 

などがあり参照されます。ここでは、私が教えていただいた施餓鬼作法より、いわゆる発願文と五如来名号をご紹介いたします。お施餓鬼の意図するところがよりはっきり理解できます。

 

至心奉上 一器浄食 普施十方 盡虚空界 

一切餓鬼 先亡久滅 山川地主 乃至曠野 諸鬼神等 

請來此地 受我此食 依我呪食 離苦得楽 往生淨土 

發菩提心 行菩提道 晝夜恒常 擁護於我 一切善願 皆令満足(下線部はあるいは、依此功徳 過去幽霊 滅罪生善 出離生死)

  

以上の偈文は、不空訳『施諸餓鬼飮食及水法』(No.1315, vol.21)に出典があります。

  
心奉持 一器淨食 普施十方 窮盡虚空 周遍法界(466c18)微塵刹中 所有國土 一切餓鬼 

 

(c19)先亡久遠 山川地主 乃至曠野 (c20)諸鬼神等  請來 我今悲愍(c21)普施汝食 

 

願汝各各 受我此食 (c22)轉將供養  盡虚空界 以佛及聖 (c23)一切有情 汝與有情 普皆飽滿

 

(c24)亦願汝身  乘此呪食 離苦解脱 (c25)生天受樂 十方淨土 隨意遊往 (c26發菩提心  行菩提道 當來作佛 (c27)永莫退轉 前得道者 誓相度脱 

 

(c28)又願汝等  晝夜恒常 擁護於我c29)滿我所

 

願施此食 所生功徳 (467a01)普將迴施 法界有情 與諸有情 (a02)平等共有 共諸有情 同將此福(a03)盡將迴向 眞如法界 無上菩提 (a04)一切智智 願速成佛 勿招餘果(a05)願1乘此法 疾得成佛

 

少し長い、いわゆる発願文の代わりに、より短い「施食偈」をお唱えする作法もあります。

 

神呪加持浄飲食 (じんしゅうかーじーじょうおんじき)
普施恒沙衆鬼神 (ふせーごうじゃーしゅーきーじん)

願皆飽満捨慳心 (がんかいほうまんしゃーけんじん)

速脱幽冥生善道 (そくだつゆうみょうしょうぜんどう)

帰依三宝発菩提 (きえさんぼうほうぼだい)

究竟得成無上覚 (くきょうとくじょうむじょうがーく)

功徳無辺尽未来 (くどくむへんじんみらい)

一切衆生同法食 (いっさいしゅじょうどうほうじき)

 

ご自宅にお伺いしての法要では、こちらをお唱えしています。

 

法食の用例として、般若訳『大乘理趣六波羅蜜多經』(No.261, vol.8)「亦爾憐愛有情等如一子。般若甘露而爲(909a12五波羅蜜大資糧。十方(? 十力)四無所畏十八(a13)不共法。諸妙功徳莊嚴法身。成就無上法王(a14)之位」があります。

 

以上が発願文についての基礎的情報です。次いで、五如来名号をご紹介いたします。

 

お写真は、仏壇・寺院用品―放光ショップからです。ときどき、必要なお品を購入します。

 

施餓鬼棚には、五如来の名号を記した五色の幡が用意されます。黄・青(実際には緑)・赤・白・黒(実際には紫)です。方向も決まっています。基本、金剛界五仏と同じです。

 

五如来名号

南無(過去)宝勝(Prabhūtaratna多宝)如来 除慳貪業福智円満

(なむ、ほうしょうにょらい じょけんどんごう、ふくちえんまん)

南無妙色身如来 破醜陋形円満相好

(なむ、みょうしきしんにょらい、はしゅうろう/しゅら/ぎょう、えんまんそうごう)

南無甘露王如来 灌法身心令受快楽

(なむ、かんろおうにょらい、かっほう、しんじん、りょうじゅけらく)

「灌法身心」は教法の浄水で身心を潅ぎ、潤し、と理解します。

 

南無広博身如来 咽喉広大飲食受用

(なむ、こうばくしんにょらい、いんこうこうだい、おんじきじゅゆう)

「咽喉広大」は、餓鬼はその姿みにくく卑しく(醜陋)、お腹が膨らみ、手足か細く、喉はストローのようだといいます。だから「広大」なのです。

 

南無離怖畏如来 恐怖悉除離餓鬼趣

(なむ、りふいにょらい、くふしつじょ、りがきしゅ)

最後の仕上げに、あらゆる怖れ(bhaya)、その原因となる、むさぼり、物惜しみの心(慳貪)を取り除き、「離餓鬼趣」、餓鬼の苦しい境遇から離脱させます。

 

作法の最後は、撥遣(はっけん)の真言を唱え、(歓喜の気持ちをもって)弾指(たんじ)三度をします。撥遣は通常、勧請した仏さま、故人さま等をもとの場所(法界、お浄土)に奉送することをいいますが、お施餓鬼の作法では、餓鬼趣からあまねくお召びするのですが、お戻りしていただく場所は、決して、もとの餓鬼趣ではありません。発願文に「生天受樂 十方淨土 隨意遊往」とあったように、天上界に転生する、もしくはお浄土の往生していただかなければいけないのです。まずは以上です。また来年、お盆の季節が廻ってまいりましたら、この続きをお話しいたします。