『大日経』具縁品第二 持明院 不動明王
眞言主の下 涅哩底の方に依って 不動(mi gyo, acala)如來使あり 充滿せる童子の形にして 慧刀と羂索とを持し 頂髮左の肩に垂れたり 一目にして諦かに觀 威怒にして身に猛焔あり 安住して盤石に在す 面門に水波の相あり 是の如きは具慧者なり
この院には不道明王と降三世の二尊の如来の持明使者としての厳しい貌相と誓願と持物等を説く。(泰廣師『大日経講伝』p.247)
『大日経疏』巻第五 持明院 高野山親王院本、Ⅱ.pp.344-347.
次往西方畫如來持明使者(633a29)及諸執金剛衆。有種種形色性類種種密印(b01)幖幟。皆於圖中出之。是一一尊大慧光明悉(b02)遍法界。所現身口意密亦遍法界。故云普放(b03)圓滿光。爲諸衆生故也。於此下位依涅哩底(b04)方。畫不動明王。如來使者。作童子形。右持大(b05)慧刀印。左持羂索。頂有莎髻。屈髮垂在左肩。(b06)細閉左目。以下齒嚙右5邊上脣。其左邊下(b07)脣。稍翻外出。額有雛文。猶如水波状。坐於石(b08)上。其身卑而充滿肥盛。作奮6怒之勢極忿之(b09)形。是其密印幖幟相也。此尊於大日花臺。(b10)久已成佛。以三昧耶本誓願故。示現初發大(b11)心諸相不備之形。爲如來僮僕給使執作諸(b12)務。所以持利刃以羂索者。承如來忿怒之命。(b13)盡欲殺害一切衆生也。羂索是菩提心中四(b14)攝方便。以此執繋不降伏者。以利慧刃。斷其(b15)業壽無窮之命。令得大空生也。若業壽種除。(b16)則戲論語風亦皆息滅。是故緘閉其口。以一(b17)目視之意。明如來以等目所觀一切衆生無(b18)可宥者。故此尊凡有所爲事業。唯爲此一事(b19)因縁也。鎭其重障盤石。使不復動。成淨菩提(b20)心妙高山王。故云安住在盤石也。
次に西方に往きて如來の持明使者、及び諸の執金剛衆を畫せよ。種種の形色性類、種種の密印幖幟有り。皆、圖の中に於いて之を出す。是の一一の尊の大慧の光明、悉く法界に遍ぜり。所現の身口意密も亦た法界に遍ず。故に「普く圓滿の光(を)放つとは、諸衆生の爲の故なり」という。
此の下位に於いて、涅哩底(nairṛti西南)の方に依りて不動明王を畫せよ。如來の使者なり(1)。(6)童子の形に作せ。(2)右に大慧刀の印を持し、左に羂索を持せり。頂に莎髻(しゃけい/しゃけ)有あり。屈髮垂れて左の肩に在り。細く左の目を閉じて、下の齒を以って右邊の上みの脣を嚙(くわ)しめよ。其の左邊の下の脣は稍(やや)翻じて外に出せ。(5)額に雛文有り。猶し水波の状の如し。(4)石上に坐して、(7)其の身、卑にして充滿肥盛なり。(3)奮怒の勢、極忿の形に作せ。(8)是れ其の密印の幖幟(の)相なり。此の尊は大日の華臺に於いて久しく已に成佛せり(/したまえり)。三昧耶の本誓願を以ての故に、初發大心の諸相不備の形を示現して、如來の僮僕給使と爲りて諸務を執作す。利刃を持し、羂索を以てする所以は、如來忿怒の命(ājñā)を承けて、盡く一切衆生を殺害(= 断諸煩悩の義)せんと欲う(なり)。羂索は是れ菩提心の中の四攝の方便なり。此れを以って不降伏の者を執繋し、利慧の刃を以って其の業壽無窮の命を斷じて、大空生(じょう)を得せしめたまう。若し業壽の種を除けば、則ち戲論の語風、亦た皆な息滅す。是の故に其の口を緘閉せり。一目を以って之を視る意は、如來、等目を以って観じたまうところの一切衆生、宥(なだ)むべき者の無きことを明かすなり。故(かるがゆえ)に、此の尊の凡そ所爲の事業有るは、唯し此の一事の因縁の爲めなり。其の重障の盤石を鎭めて復た(= 再び)動ぜざらしむるは、淨菩提心の妙高山王を成ずるなり。故に安住在盤石と云う。
具縁品第二以下は、資料紹介として、あまり説明を加えずに、興味あるところを読んでみようかなと思っています。まずお試しほどのものです。(でも基本的には、頁を追って読むほうがいいかしら。まずは、住心品疏を読み終えてから考えます。)