日本仏教 十三宗への導き
日本仏教の宗派を数える仕方に、古くは「八宗」という数え方がありました。それは、凝然(1240-1321.鎌倉後期の東大寺戒壇院の僧)撰の『八宗綱要』二巻(文永五年[1268年]成立)との題名にもあるそれをいいます。その主要な八つとは以下の通りです。
俱舎宗(くしゃしゅう)、成実宗(じょうじつしゅう)
律宗、法相宗(ほっそうしゅう)、三論宗(さんろんしゅう)
天台宗、華厳宗(けごんしゅう)、真言宗
さらに本書は、「八宗の外(ほか)、禅宗、および浄土教盛んに弘通す」として、簡略に言及しています。「八宗」が当時仏教界の共通認識を示すものなのでしょう。では、現在は宗派を概ね「十三宗五十六派」と数えています。十三宗とは、まずは、奈良時代平安京を中心に栄えた南都六宗(なんとりくしゅう/ろくしゅう。八宗から天台、真言を除く)を継承する、法相宗(興福寺、薬師寺など)、華厳宗(東大寺)、律宗(唐招提寺など)の三つ、それに平安時代になって開かれた比叡山(北陵)の天台宗、高野山(南山)の真言宗で五つ。南都六宗は仏教の基礎学として、宗派を問わず学ばれます。ですから、いわゆる「宗派」と呼べるのは、平安時代以降になって開かれる宗派であり、それぞれの開祖(宗祖)は、となります。天台宗・伝教大師最澄、真言宗・弘法大師空海となります
宗派の要件は、所依(依るところ)の経典を定めたうえで、それ以外の経典を、所説の対象、教義内容、さらには仏伝(お釈迦さまのご生涯)にそった説示の時期などを考慮して比較、配列し、その上に自らが依るところの経典を位置づける、すなわち仏典全体(一切経)を体系化する、教相判釈という作業をいいます。
天台宗は「法華を以って所依の本経となし、以って一代の諸教を判」じ、五時八教を用います。真言宗は「大日経、蘇悉地経等の秘密真言教を以ってその所憑とな」し、「十住心を立てて大小顕密等の諸教を摂し」ます。天台宗、真言宗は総合的、包括的な立場を有しています。また前者は教理・実践を含めて密教を取り入れ、後者の東密(おうみつ)に対して台密(たいみつ)と呼び、区別しています。
法相宗、華厳宗、律宗の三つ、天台宗、真言宗の二つに、鎌倉新仏教とも呼ばれる、法然(浄土宗)、親鸞(浄土真宗)、栄西(臨済宗)、道元(曹洞宗)、日蓮(日蓮宗)、一遍(時宗)によってはじめられた六つ、そして江戸時代・隠元(黄檗宗)、平安時代末期の天台宗の良忍を開祖とする融通念仏宗が加わり、十三宗となります。
平安時代末期から鎌倉時代にかけて新たに広まった宗派は「選択」(せんじゃく)という性格を有しています。それは時代的な要請にこたえて、あらゆる仏道修行の中から、もっとも適切なひとつを取捨、捨て選びとることであり、念仏は阿弥陀仏が、われわれが極楽浄土に往生するための「本願」行として定めた称名であり、坐禅はお釈迦さまいらいの仏教の伝統的な修行法であり、題目は、おそらく、日蓮上人がみずから選択されたものなのでしょうか。
以上、日本仏教十三宗学習の導入として作文してみました。今日より以降、それぞれの興味にしたがって、各宗派の学習を進めます。