弁才天のご功徳は、実に多くがあります。『望月仏教大辞典』「辯才天」には、「人をして無礙辯才を具足し、福智を増益し、延寿及び財宝を得しめ、また天災地震を除滅し、且つ戦勝を獲しむる」とあります。このうち、代表的なものは「無礙弁才」(Cf.「無礙弁解」pratibhānapratisaṃvid. 「弁」は、正しく、とどこおりなく話す。知的に閃く、直観的に知る、の意)でしょう。これは、サラスヴァティーと呼ばれる聖なる河川の神格であり、「思慮」(dhī-)を司る(山田智輝「RgvedaにおけるSarasvatīの研究―河川の女神の諸相―」に指摘がある)ともされる女神サラスヴァティーが、ことばの女神であるヴァーチュ(Vāc)と同一視されることで、身につけた(獲得した)、あるいは、より鮮明になった(表面化した)ともいうべき、すぐれた性質であるといえます。
本日のご法事は、お寺の本堂でありました。ですから、弁才天が釈迦如来のおそばにお祀りされています。試みに、弁才天さまの「無礙弁才」を三つに分けてお話ししてみました。
お寺にお祀りされている弁才天さまです
ものごとを素直に、正しく理解する能力である理解力
学び理解したことを忘れず、必要に応じて引きだすことのできる記憶力
学び得た知識を、種々な手立てを通して、人のために役に立てる応用力
いろんな受けとめ方があるでしょうが、誰もが身に付けたい能力です。弁才天は、その他にもたくさんのすぐれた性質をそなえていらっしゃいます。