【呼称の異同】(智顗)国使戒、(法蔵)通国入軍戒、(義寂)不通国使戒、(太賢)通国使命戒、(勝荘)国使戒、(明曠)通国使命戒、(智周)不得故作国賊戒
【概要】敵軍と結託して自国に不利益を蒙らせてはならぬ。
【本文】佛言く、「佛子、利養・悪心のための故に、国の使命(シミョウ)を通じ、軍陣合会し、師を興して相伐ち、無量の衆生を殺さしむることを得ざれ。しかも菩薩は、軍中に入りて往来することを得ず。いはんや故らに国賊と作らんをや(国の不利益に働くならなおさら)。もし故らに作らば、軽垢罪を犯ず。
【諺詮】通国(ツウコク)使命(シミョウ)戒第十一<国の使命を通ずることを戒しむるなり。> 悪心、または利養のために、両国の間の使いをして、相い戦わしむるを制す。軍中に往来することも、この中に兼ねて制す。今の世に軍法を人に教うる僧あり。また軍陣の吉凶を占う僧あり。この中の犯なるべし。[結犯]悪心、利養の心あれば犯ず。また衆生を殺害せしむる辺は、殺生に入れども、応ぜぬ(?)使いする辺にて軽戒に入るなり。[開縁]和穆せしめんがために使いするは犯なし。[通局]七衆、同じく制す。
【現代的解釈例】 [11] インドや中国、そして日本など、過去の僧侶は国の相談役として、国の命運にもかかわる役目を果たしていたのであろうか。ここでは檀務の際の注意事項として読み直してみます。時に僧侶は、檀家さまの家庭のご事情をお聞きすることがあります。「秘密厳守」とは大げさですが、檀家さまの家族関係や兄弟姉妹間の不和を鎮めるように配慮し、家族間の和合に心をつくすこと。そんな事例もときどきあります。