【呼称の異同】不敬好時戒、違禁行非戒、不作邪業戒、詐親害生戒、時月媒嫁戒、[自月行非戒]
【概要】仏・法・僧の三宝や仏の教説を偽り、間違った行動を起こしてはならぬ。
【本文】若佛子、悪心を以ての故に、自身に三宝を謗り、詐りて親附を現ず。口には便ち空を説いて、行は有の中にあり。白衣(在家、俗人のこと)の為に男女交会を通致して、婬色し縛著せしめて、六斎日と年の三長斎月とに於て、殺生、劫盜、破斎、犯戒を作なば、軽垢罪を犯す。/かくの如き十戒、応当に学し、敬心に奉持すべし。制戒品の中に広く解せん、と。
【諺詮】詐親(サシン)害生(ガイショウ)戒第三十<詐り親しんで、生を害することを戒しむるなり。>これに三戒有り。
一には如怨詐親戒。いわく、口には一切の法空なりといって、その行作は飲酒、非時食し、日夜に婬に耽る等、今時、台密・禅の徒にこの類、太だ多し。これすなわち三宝を謗する故に、罪をいえば、すなわち無間獄の業、犯をいえば、すなわち第十の重禁なり。いまは、詐(イツワ)って利養を求むる辺に軽罪を結するなり。これは道俗同じく制す。
二には媒家婬穢戒。いわく、俗家の男女の媒(ナカダチ)して婬せしむるを制す。これは教他婬の辺には重禁を犯ずれども、いま媒家の辺には軽罪を結するなり。これは道俗同じく制す。
三には斎日毀禁戒。いわく、三長斎及び六斎日に破斎し、あるいは余の威儀戒を犯じ、または殺生し偸盗すれば、本戒の外に重ねて、この戒を犯ずるなり。
三長斎といっぱ、正五九月の朔日より十五日までをいう。密経には、これを神通月と説いて悉地成就の好時とす。智論には、この月には天上に大宝鏡を懸けて衆生所作の善悪を悉く記すといえり。六斎日といっぱ、天神、人間に下って善悪を撿(ケミス)る日なり。八日と二十三日とには四天王の使者下る。十四日と二十九日とには四天王の太子下る。十五日と三十日(ツゴモリ)とには四天王自ら下って巡察すといえり。<四天王経の説> この故に、三長斎月と六斎日とには必ず持斎すべし。故にこの一戒は唯し五戒、在家に制す。出家は尽寿持斎なるが故に、制するに及ばず。<天台の義> これに準ずるに今の出家の五戒、摂律儀の菩薩<未だ十戒を受けざる小僧>は、形服は出家なれども、戒は近事戒なるが故に、三長斎、六斎には必ず八斎戒を受持すべし。
【現代的解釈例】六斎日や三長斎月、またはお盆やお彼岸など、寺院における年中行事の期間や、両親のご命日、お師匠さまのご遷化にあたる日などは、十分に身を慎むこと。また自らの信仰を真実なるものとし(言行一致)、学んだ知識を修行、実生活に実現させること(知行合一)。