四十八軽戒[12]悩他販売戒

【呼称の異同】販売戒、傷慈販売戒、不悪販売戒、悩他販売戒、不得作販売戒

【概要】人民・奴隷・家畜を売ったり、死者を弔う具を取引したり、他者にさせたりしてはならぬ。

 

【本文】若(ナンジ)佛子、故らに良人・奴婢(ヌビ)・六畜を販売(バンマイ)し、棺材・板木・死を盛るの具を市易(シヤク)すること、なお自ら作すべからず。況や人を教へて作さしむや。もし故ら作さば、軽垢罪を犯ず。

 

【諺詮】悩他(ノウタ)販売(ヘンマイ)戒第十二<他を悩まして、売り買いすることを戒しむるなり>これに三戒あり。一には良(リョウ)人<善良の人>を売る。ただその人の苦しむのみにあらず。眷属分離の苦しみあるが故に制す。二には奴婢ならびに牛・馬・羊・犬・豚・鶏を売る。これ皆衆生を苦悩せしめて、却ってわが楽とするが故に制す。三には棺槨<死人を盛る具なり>等を売る。これは人の死せんことを求むるが故に制す。いま御房(オンボウ)と号して、人を葬(ソウ)して、その賃を求めて、活命する者あり。この中に入るべし。[結犯]利養、または悪心を制す。この心を離れて悩他販売あるべからざる故に。一向に開縁なし。もし他を損ぜざる正販売は在家にはこれを開す。正販売といっぱ、『瑜伽』の第二にいわく、一には農業、二には商売、三には牧牛、四には王に事うる、五には書<文章を作り、物を書くなり>、筭計<筭勘するなり>、数<易の占いなどをいう>、印を習学する、六には所余の工芸業処<一切の細工等なり>を習学する。これらの活命をいうなり。[通局]七衆、同じく制す。

 

【現代的解釈例】<職業倫理・生命尊重>なんと人身売買の禁止、役畜・食肉用としての家畜の販売、そして人の死を想定しての、すなわち、ふところ勘定に入れての業務の禁止である。葬祭事業は公益事業であることを忘れないように、それを手伝う僧侶はもっともっと気を付けねばならない。またペット・ショップなどの動物の販売、また犬さんや猫さん、小鳥さん、お魚さんなどを家に迎え入れたときは、いのちの尊さを教えてもらうとの姿勢で責任、愛情をもって飼育すること。お互い掛けがえのないいのちを全うしましょう。