飛行機に乗った人は覚えがあると思うが、荷物を載せるところに BAGGAGE CLAIM の表示がある。

 初めてみた時「おや」と思った。自分の思っていた CLAIM と意味合いが違う。どうも 「苦情」 という意味は無いらしいことに気付いた。

 実際クレームに苦情の意味は無い。結果的に苦情になることはあるが。

  会社に居た頃はときおり、現場で手に負えないというクレームに立ち会った。

 然し、面白いのは実際には世間で言うクレーム(いわゆるトラブル)に発展したことは無かったのだ。最長一時間というのを覚えているが、それ以外は僅か数分で終わった。

 要するにこちらが構えてしまって(興奮してしまって)、相手の言い分を苦情と受け取っている。攻撃されていると思っている。従って相手の言い分を冷静に聴いてない。

 相手は自分の主張をこちら側に冷静に伝えていない。従ってこちらが理解してないことに気づかない。こうしてお互いにすれ違いの問答を繰り返しているだけなのだった。

 CLAIMの本来の意味、請求や申請 が互いの興奮によって 苦情、紛争に置き換わっているのだった。

 普通に相互の話の交通整理をすればそれで終わった。


 一時間掛かったクレームは時間はかかったが実にスムーズに終わった。相手はこちらから電話を切らなかったことを賞賛していた。


 そのとき使ったのは 「反論できない原則を繰り返し主張する」 やり方だった。これは黄金の法則だ。

もっとも、家でこれをやると妻は酷く怒る。