2017/8/16の改訂


 自分が詰まらないことをしているが、他人がもっとつまらないことをしていれば、自分の愚かさに気づいてやめようとすることがある。一般には「人のふり見て我がふり直せ」という諺が当てはまる場合がある。

 我が国には諸国に例を見ないボーナスという賃金制度がある。建前では利益分配だが、実質は賃金の部分的遅配といったほうが適切だ。労働基準法には全額通貨での規定があるので、遅配や現物支給等は許されないことになっている。従って実態がどうであれ、賞与は利益分配になっている。利益という概念のない公務員にもボーナスが有る始末だ。

 非正規と正規を大手を揮って差別する良くないシステムだが、批判は極少で聞いたことが無い。

 韓国の給与制度も我が国と似ていて基本給を抑え、さまざまな手当、賞与の支給という体系になっている。その中には相当馬鹿げた手当(食事手当とか)もあるが、我が国にも馬鹿げた体系が少なくないので、何を言っても目糞鼻糞を嗤う話になる。

 韓国のいろいろなシステム、社会通念にはこれは我が国を真似てほしくなかったという愚劣なものが少なくない。

 給与全体の中で基本給を少なくするほど時間外手当は圧縮出来る。圧縮した基本給に法定の倍率を乗じるので経営側は有利になる。総支給額を労働時間で割ると働けば働くほど実質時給は低減していくという現象が起こることさえある。

 韓国の労働者が裁判を起こした。恒常的に支給される手当は基本給に加算して時間外手当てを支給すべき、という訴えだ。これは労働者側が勝った。

 もっともな訴えと思う。逆に何故我が国でこの種の訴えが起こされなかったかが不思議だ。実態を無視して建前で考え、おとなしい我が国の人の特徴がよく出ている。


 この問題は昔取り組んだことが有った。かなり長い間努力したが挫折した。労働者は手当の多い体系を歓迎することが少なくないし、利用に個人差の大きいフリンジ・ベネフィット(給与外に個人に与える種々の利益)を喜ぶ。包装が中身より大事な場合は少なくない。

 給与体系をいかに構成するかは受給側の平均的な知的レヴェルによるというのは遺憾ながら動かしがたい事実だ。不合理な構成になったとしても、受給側が結果的に不合理を喜ぶのであれば仕方が無い。経営は無用な軋轢を最少にするのが良いのである。

 使われた立場だけでいるとこういうことが一生分からないで終わる。ガッツの有る人は独立して貰いたい。


 よしんば独立して生涯総収入が減ったとしても、多くのことが分かったほうがよいではないか。