時代の音楽を作るトレンドセッター | 伊藤涼の音楽

時代の音楽を作るトレンドセッター

音楽業界に入ってもう少しで15年。JEに入ったばかりの時は毎日スタジオに通って、今から考えるとかなりアナログなレコーディングをしていた。アナログっていうのも悪い意味じゃなくて、しかも本当の意味でアナログでもなくて。当時はかなり製作費も使わせてもらっていたからスタジオにミュージックマンたちを集めてあーだこーだ言って朝方まで音楽作っていた。JEを退社した2009年には音楽の作り方はかなり変わっていたと思う。とは言え、自分の制作スタイルは貫いていたつもりだったので、その時はその変化を実感できないでいた。

フリーのプロデューサーになって感じたのは、オレはもうレコーディング会社の人間じゃないこと。立場が違う。楽曲も、予算も、最終の形態も、その他もろもろ楽曲を世に出すにあたって何も決められない。そのかわりと言っちゃなんだが、音楽をゼロから作ることができる。現場に近くなったことでよりクリエイティブな脳を動かせて、ゼロから音楽を作ることができるのは楽しいってこと。

ところが今、ゼロから音楽を作るクリエイターにハイクオリティなものを求められるようになってきた。ハイクオリティなものとは、つまりは完成形に近い音源で、このままリリースしても良いというくらいのレベル。言ってみればディレクターに提出するときには、アーティストさんのレコーディングの時だけスタジオに入ってください。いやむしろ、ボーカルディレクションもしましょうか?ミックスもこっちでしましょうか?ってレベル。最近の楽曲コンペって、いい楽曲との出逢いもあるけど、どこに制作の仕事を振れるかっていうチーム選びのためのコンペみたいなところもある。だから一度採用になると次からはかなりのアドバンテージをもって楽曲作りが始められる。

レコード会社は15年前とは比べ物にならないくらい製作費がないことは確か。だから彼らは良いチームに丸ごと振って少ないバジェットでハイクオリティなものを作りたい。わがままな要望だけど、それに応えるのがクリエイターたちの役目。メロディ、歌、歌詞、トラック、世界観、サウンドを兼ね備えることが必要だし、そこにビジネスやブランディング、先見の目までも持ち合わせることが必要。結果その時代の音楽を作るチーム、トレンドセッターになっていくんだと思う。