2021.12.13 Sセンター病院
・緩和ケア外来
骨転移の痛みが悪化して予定外の診察を受け、痛み止めが医療用麻薬のオキシコドンに変更になった娘は、処置室で薬を飲んで落ち着いていた。

・退院支援科U看護師
もともとこの日は紹介状の件でU看護師さんに会う事になっていた。

東京の免疫治療をしていただくMクリニックには17日の予約が取れていたので、17日までに今までの検査データをCDにしていただくように再度依頼をした。

在宅クリニックは娘の希望で女医さんを探していただくようにお願いしていた。
同じ区に女医さんのI在宅クリニックが見つかり、夜に往診に来てくださる事になった。

病院から戻り、ベッドでうつ伏せの状態でI医師の往診を待っていた。
ほどなくしてI医師が来られ、娘との面談が始まった。
・今の状態で抗がん剤の副作用に不安があり、治療をお断りした事。
・今後は東京のMクリニックで免疫治療を受ける予定でいる事などをお伝えした。

私はこのI医師に何処となく暗い印象を受けた。
まだ初めて会ったばかりなのに、何だかこれから看取りまで一番辛くなる時期に頼れるだろうか?
そんな風に感じた。

I医師は今後の訪問医療の流れや必要な書類の説明をして部屋を出られた。 

玄関で見送る時だった。
娘に聞こえないように小声で話し掛けていらした。
「さっき娘さんから自由診療の免疫治療を受けるつもりだとお聞きしましたが、
お辞めなさい。免疫治療なんて効きませんよ。高いお金を払うだけ無駄になりますよ。」と。

私は嫌な予感がした。「この先生に頼りたくない!」
免疫治療の内容を調べたわけでも無く、Mクリニックを調べたわけでも無く、自由診療の免疫治療を十把一絡げにして否定したのだ。

「嫌な事は断って良い!我慢する事は無い!」以前ケイ君のお母様が言われた言葉を思い出していた。

玄関先ではI医師の言葉には反論せずに、ただ「ありがとうございました。」と見送った。

心の中でこの医師はお断りしよう!と思いました。

娘のところに戻ると「何を話していたの?あの先生暗いね。胸の音も聞いてくださらなかった。事務的な話しばかりだったね。」
娘は骨転移の痛みに向き合ってくださる医師か?多分本能的に振り分けていたのかもしれない。

「さーちゃんが信頼出来そうに無いと思った第一印象は大切にしようね。
I医師はお断りしておくね。」

「ごめんね。またU看護師さんに探してもらう事になるの?」
「大丈夫よ!明日電話しておくから安心して休みなさい。」

次の朝U看護師さんの方から電話が来ました。
「昨日のクリニックはどうでしたか?
契約されますか?」と聞いてくださったので、話しがしやすかった。

帰り際にI医師に言われた内容を伝えると驚かれていらした。
「えッ?そんな失礼な事を言われたんですか?
ごめんなさい。直ぐに別のクリニックを探しますね。」
次のクリニック探しは女医さんに拘らない事を伝えた。
U看護師さんは直ぐに別のクリニックを見つけてくださり、次の日には新しいH在宅クリニックのドクターとC訪問看護センターの看護師さん達が面談に見える事になりました。

この後H在宅クリニックとC訪問看護センターの方々には亡くなるまでお世話になるのでした。