この作家と出会ったのは私が画廊で働いている頃で、
当時の勤務先はいわゆる物故作家と呼ばれる人の作品を多く
扱っていたので、生きている作家さん(笑)の絵を観るのは
新鮮だった。
作品に惹かれた理由や経緯は覚えていない。
強いて言えば直感。
運が良いんだか悪いんだか分からない半生を送ってきたが、
時に優秀に働く嗅覚が、この作家および、この作家が生み出す
作品を見逃すなと私に囁いた……、気がする。
お互い時間に余裕がある時は、へべれけになるまで呑んだりも
したけど、いい歳したおっさんとおばさんは言うまでもなくロマンス
などは無縁で(それに私は年下趣味なので)、
時に色恋沙汰よりももっと楽しい、人生談義や美術に関する
議論なんかを生意気ながら交わしながら、良い同志のまま
20年弱の時を過ごした。
友人であり、応援したい作家であり、
人間として興味深い人……
つまり、見逃せない。
言葉にするならそれが、
「この作家が好きな理由」かもしれないが、
好きに理由はない。
それが一番しっくりくる気もする。
『過日』
『野みち』
『地平』