前回顔を出したのは如月か……
気が付けば季節が一つ移り変わってしまったよ。
相変らず気鬱になる疫病は衰える気配が見えないね。
一人一人の慎み深い行動が必要で、
誰の為かと言ったら「自分の身を守る為」
「周囲の人(大切な人)の為」という
至って単純なことだと思うのだが、
それを我慢出来ないというか、
理解出来ない人間が増えているのが現状かな。
困ったものだ。
先が見えないこの状況にうんざりしているのは判るが、
我慢をしているのは万人が同じだろうに。
こんな話ばかりしていても更に気が滅入るね。
では春らしい物を少しお目にかけようか。
山野に自生する山藤は蔦が左巻きになっていて、
観賞用の棚でよく見られる藤は右巻きなのだよ。
これでは遠くてそれがよく判らないだろうから、
もしどちらかの藤を目にする機会があったら、
よく見てご覧。
こちらは何の花か判るかな?
これは桐の花だ。
桐は鳳凰が止まる木として、
重宝されていたと言われている。
日本でも様々な分野で神聖な木として扱われているね。
釣り鐘状の形にこの何とも言えない色合いと、
気品のある甘い香りが特徴的で情緒的な花だと私は思うよ。
もどかしいと思うのは、どんなに美しい花を見ても
神子殿の髪に挿してあげることが叶わないという点かな。
夢の中では君をこの腕の中で
強く抱きしめているというのに。
そうぼやいたところで何も変わらないから、
今宵も独り寝を決め込むしかないのだがね。
こんな私を哀れだと思ったら、
夢の通い路を少しだけでも開けておいてくれまいか。