■立ち位置。
先日、
あるPというスタッフ会社の、
とてもよくできる営業担当者2人が分離独立の相談にやってきました。
日頃から信頼し、頼りにさせてもらっている、
仕事のできる2人の男性です。
P社は本部10人弱、男性中心のスタッフ会社。
社長と経理の2人で3000万くらいのデザイン会社を数年やったところに、
人材派遣部門を構えるためにその2人が招かれ、
やがて6人のユニットで2億数千万の売上をあげるまでに成長してきました。
2人が話すには、
・営業成績に応じたインセンティブ制を採用して欲しいが、給料が安いまま変わらない。
・そしてその給料はとてつもなく安い。
・大きなプロジェクトを苦労して成し遂げても、労いの言葉ひとつかけてくれない。
・遅くまで仕事で残っても、飲みに連れて行ってやるの一言もない。
・実は経理のおばさんが愛人だ。
・その上愛人が4人もいる。
・交渉や相談しようとすると逃げるし、自分で決断ができない。
・そんな僕たちは何に向かって頑張ればいいのか五里霧中である。
したがって、
人材派遣部門6名で決起して、
分離独立をはかろうと決意したのだそう。
そこで、
1人で起業したmagnaの資金調達や会社設立の経緯などを参考にしたいと、
会社を訪れてくれました。
もちろん私も新規事業展開について相談させてもらったり、
具体的な案件で協力関係にあり、
心から信頼できる6人だから、
真剣に話を聞き、
一緒にベストな回答を考えてみました。
私は独立支援論者なので、
もちろん「やっちゃえやっちゃえ。」と発破をかけてみました。
その「時」を待っていた彼らに、
「時」が来たのだから、他に選択肢などありません。
「現在の会社に残ること」と「独立すること」を比較して、
生涯賃金のどちらが得をするか、とか、
倒産する確率はどちらが高いか、とか、
獲得できる売上と営業利益はどちらが大きいか、とか、
「得」や「楽」をセレクトするための決断ではきっとないのでしょう。
6人の仲間が情熱を燃やせる仕事がどちらのフィールドで実現できるのか、
社内の無駄なストレスを排除して顧客とスタッフにやりがいや利益を還元できるのはどちらなのか、
より自分らしい自己実現をできるのがどちらなのか、
「生き方」をセレクトする決断なのだと思うから、
ベストな回答は自明の理であるわけです。
応援したい気持ちでいっぱいになりました
あとは資金調達だね
ただ1つだけ、反対に思うこと。
私の立ち位置は社長です。
同じ立ち位置でこの話を聞く経営者は皆、
「残された社長」が気になります。
2人が今の会社で新規事業をスタートさせるとき、
会社の器と事務所と机を用意してくれたとき、
2人を応援したい気持ちがなかったわけではないでしょう。
2人が思う以上に、
6人の将来や家庭やプライベートややりがいや生き方について、
1人思いを致し、
身を切るようにして資金を捻出したことも、
もしかしたら、
もしかしたらだけど、あったかもしれないよね。
社員が辞めるのも、
独立して仕事を持っていかれるのも、
投資して回収できないのも、
借金するのも背負うのも
すべて社長の責任の範疇です。
決断し、実行したことは、
すべて代表取締役の責任の範疇です。
だけど、
会社を去るときに、
「思いやり」と「感謝」だけは、
残してあげてほしいと思う。
同じ立ち位置に立ったとき、
きっと、
「思いやり」と「感謝」のありがたさが、
身にしみて分かるのではないかな。