トゥルルルルルルルル…
トゥルルルルルルルル…
トゥルルルルルルルル…
受話器からは長い間、呼び出し音が流れている。しかも諦めては掛け直しを数回繰り返している始末である。
「あいつ、絶対寝てるよな…。」
溜息まじりに呟くと、側で談笑している二人のクラスメイトの一人、高山秋人(たかやまあきひとが声を掛けてきた。
「まだ出ないのか?もうさ、迎えに行った方が早いと思うけどな。」
携帯を切りつつ夏目大地(なつめだいち)は再び溜息をつき、やや険しい表情を作りながら応える。
「うん、面倒だけど行ってくる。荷物、置いていくからよろしく。」
手で肯定の合図を送る秋人と柔らかな苦笑を浮かべる春日愛菜(かすがまな)の二人を残し、集合時間を過ぎても姿を見せない冬月紗綾(ふゆつきさや)の自宅方面へと歩きだす。
集合場所である駅前バスターミナルから紗綾の自宅までは、然程の距離ではない。むしろ集まる四人の中で一番近いのだ。だというのに遅刻するということは寝坊くらいしか理由が見つからない訳である。
(まあ、それを見越して集合時間を早めてあるんだけどね。)
と、今回の卒業旅行を取りまとめている大地は何度目かの溜息をつく。
時間にゆとりがあるとはいえ、バスは自分達を待っていてはくれない。もしものことを考えると、自然と足早になっていく。
「あっ、大地!」
通り過ぎそうになった本屋の中から声を掛けられる。その声の主は紛れもなく遅刻者のものだった。
「なぜ、お前は時間が過ぎているのに本屋にいるんだ?」
呆れて怒りも湧いてこず、ただ質問を投げ掛けていた。
「んー、大地なら余裕を持ってスケジュール組んでくれてると思って。」
紗綾は悪びれることもなく応える。これは、お互い付き合いが長いため、分かり合い過ぎていた結果であった。
「お前な…どれだけマイペースなんだよ…。」
紗綾らしいといえば紗綾らしいが、流石に人を待たせてまでの買い物はまずい。そう思っていつものように注意するため口を開き掛けた大地だが、先に紗綾から買い物の内容を聞かされた。
「大地が旅行に必要だからって言ってた本、結局買えなかったってメール来たから寄ったのさぁ。本屋はうちのが近いしね。」
なるほど、紗綾なりの気遣いだったというわけだ。しかも本屋の開店を待ってのことらしい。
「わかった。俺のために、ありがとうな。荷物持つから急ごう。秋人達が待ってる。」
大地はやや照れながら紗綾の荷物を持ってやると、急ぎ足で戻ろうとする。
「わわっ!ちょっと、待ってってば!」
紗綾も大地を追うように、こちらは小走りになりながら移動し始める。
続く
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