しかし大地は、ふと疑問が頭に過ぎり速度を緩める。
「お前、何故、電話に出なかった?」
その問いに対し紗綾は不思議そうな表情を見せ、鞄の中を確認する。
「んー?電話したん?鳴ったかなぁ…あらら、結構、掛けてきてるねぇ。」
''掛けてきてるねぇ''ではないと思いつつも、大地は半ば諦めの溜息をつく。
しかし、紗綾のことを理解しているつもりでいた大地は、どうせ寝坊だと決め付けていた自分を反省する。
「ふぅ…兎に角、二人が待ってるから急ごう。」
そだねぇと紗綾も後に続き、二人は急ぎ足で移動する。
バスターミナルで待つ秋人と愛菜は、多少は時間を気にしながらも、あの二人なら大丈夫だろうと気楽に考えていた。
愛菜がふと目を向けると、代わりに荷物を持った大地と、その荷物の持ち主であろう紗綾の二人が、こちらに向かっているのが見えた。
「あ、来たみたいよ。紗綾ー!遅いよー!大地君、お疲れ様!」
秋人も振り返り、二人に手を振りながら声を掛ける。
「そろそろ、バスが来るぞ。急げ急げー!」
待つ二人は笑いながら荷物を持って乗り場へ移動する振りをする。
バスの出発時刻を把握している大地は、苦笑しながら速度を変えることなく向かっているが、何も理解していない紗綾は驚きながら走り出そうとする。
「紗綾ー、置いてくよー!」
さらに追い打ちを掛ける愛菜の声に過剰に反応を見せ、紗綾はアタフタと走り続ける。
「ま、ま、ま、待ってーっ!バス、止めといてーっ!」
無茶なことを叫ぶ紗綾を見て、周りを行く他人までもが笑い始める。
大地は苦虫を噛み潰しながら笑っているという、器用な表情を見せながら速度を緩める。
「紗綾、あれは冗談だ。真に受けるな。転んで怪我するぞ。」
大地が紗綾の背中に声を掛けると、当の紗綾は"え?"と頭にクエスチョンマークが浮かんでいる様な表情で振り返る。
そして立ち止まり、大地が急いでいないことに思い至ると頬を膨らませながら秋人と愛菜を睨みつける。
「二人とも、ひどーい!」
気付かない方が悪いと、素知らぬ顔をしながら再び荷物を置き、秋人は大地に声を掛ける。
「それで…遅れた理由は?」
後からようやく到着した大地は、掻い摘んで説明すると、秋人と愛菜は笑いながら納得した表情も見せる。
続く
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