初心・uigokoro 22-2~春のひといろ~
その子の言う店は美容院だった、ちょうど髪を切ろうかと思っていたのも不思議な縁だ。
お店の中にその子が声をかけると、元気のいい女性が現れた。
「どうしたの?女の子連れてくるなんて珍しい。だから雨が降ったのかしら?」
「だから雨じゃなくて、雨だからだよ。そこで傘をなくして雨に降られてたんだ。リョーコさん、タオル貸してよ。」
リョーコさんと呼ばれた女性は親しげにその子に話かける。
彼は笑いながらわたしにタオルを渡そうとした。
「せっかくだから、シャンプーする?」
「じゃぁ、カットもしてもらおうかな?」
えっ・・・と驚く顔をするので慌ててさえぎった。
「ちょうど切ろうと思ってたの。」
「ありがとう、じゃそこに座って。」
リョーコさんが話しかける、彼の名前はマサキと言って知り合いの息子さん。
彼のお母さんを知っているから、小さい頃からカットしてあげたりしてたんだと。
「そうなんだ・・・。」
「綺麗な髪してるわね、どのくらい切る?」
「肩まで切ろうかしら・・・あ、でもやっぱり背中あたりで。」
ブラシを入れながら思い出したように
「あ、そういえばお客さまの名前をまだ伺ってなかったんだけど。」
「城島といいます。」
「そう、城島さんよろしくね。わたしは諒子」
ひとに髪を梳かれるのは気持ちいい、シャンプーをされ少しうとうとした。
「少し待ってて。」
洗い終わるとそう言って彼女は席をたった。
ほどなくマサキくんがカフエオレを持ってきてくれた。
「良かったらどうぞ、嫌いじゃなかったらいいのだけれど。」
「ありがとう、いただきます。」
どうして何も言ってないのにカフエオレだったのだろう。
嫌いじゃない、むしろ好きなほうだ。
怪訝な顔をしていたのか、彼が
「嫌い・・・だった?」
「うぅん。」
あわててかぶりを振ると、あれ?と。
「そのピアス・・・何処かで見たことある。どこだろう?」
わたしの片耳につけているピアス
「あぁ、コレ・・・母が大事にしなさいってくれたの。きっと良いことがあるからって。」
おかしいな、滅多にないって言われていたのに。
そういえば、待っている間に雨もすっかりあがってしまったようだ。
わたしはマサキくんの淹れてくれたカフエオレを飲み終わると窓の外に眼をやった。
<22-3>につづく