北川歩実 「長く冷たい眠り」
- 北川 歩実
- 長く冷たい眠り
人はなぜ、永遠の生命を求めるのか。交錯するさまざまな思惑。いくつもの事件がひとつに絡み合ったとき、意外な真実が浮かび上がる!?
本格推理の気鋭が放つ傑作短編集。表題作を含む全7編を収録。
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「冷凍睡眠」をテーマにした、連作ミステリ。
この単語を聞いて、咄嗟にハイバネーションという単語が頭に浮かんだのは僕だけではないはず。
とはいえ、本書で取り扱われている冷凍睡眠は、現代でも有り得そう、と思えてしまうもので、一つ一つの話が非常にリアルです。いや、冷凍睡眠がリアル、というよりも、一つ一つの話がリアル、と言ったほうが良いでしょうか。
連作を貫く仕掛けなどはありませんが、その分、どんでん返しで有名な北川作品らしく、一つ一つの短編に捻りが利いています。
「冷凍睡眠」というくくりの中で、それが決して制限になることがなく、どの作品にも巧く生かせているのは、サイエンス・ミステリの書き手である北川歩実ならでは。
どの話もそれなりに安定して質が高いのですが、個人的に一番驚いたのは「闇の中へ」。
読者の予想を綺麗に裏切る、衝撃的なラスト。
複雑な構図などは一切無く、非常にシンプルな一編ですが、意外性はこの短編集の中でもベストでしょう。
傑作です。
全編に共通する「冷凍睡眠」というテーマ。
しかしながら、このテーマは・・・・・・。
まさか、と読んでいる途中に思いはしたのですが。
それにも関わらず、それで一つ一つの作品を成立させている、というのは、相当凄いことだと思います。
冷凍睡眠、というテーマを、有る意味で書ききっている、と言える作品でしょう。
果たして、本書の登場人物たちの未来には何があるのか。
ミステリとしてもお薦めですが、それ以上に冷凍睡眠、というテーマに少しでも興味がある方は是非。
答えは決して描かれていませんが、確かに考えさせられる本でした。
お薦め。7点。