法月綸太郎 「頼子のために」 | The Key of Midnight

法月綸太郎 「頼子のために」

法月 綸太郎
頼子のために

「頼子が死んだ」。17歳の愛娘を殺された父親は、通り魔事件で片づけようとする警察に疑念を抱き、ひそかに犯人をつきとめて相手を刺殺、自らは死を選ぶ──という手記を残していた。手記を読んだ名探偵法月綸太郎が、事件の真相解明にのりだすと、やがて驚愕の展開が!

精緻構成が冴える野心作。


 ◆ ◆ ◆


長い間積んでいたのですが、ようやく読めました。

一つの手記を元に真相を推理していく、シンプルなミステリですが、構成、真相ともに素晴らしいです。

これほどシンプルにネタを絞ってあるミステリは、最近ではあまり見ません。

勿論その分、完成度も高いです。


今から二十近く前に発表された作品名だけあって、さすがに今読むと真相の大半は予想がついてしまうのですが、それでもなお、心に残るものがあるのは、本書がミステリでありながら家族小説の側面も持っているからでしょうか。

ラストで明かされる真相は、確かに衝撃的ですが、酷く後味の悪いものです。

ラスト一行ではありませんが・・・・・・・。

早い段階で真相が読めたにも関わらず、さむけを覚えました。

恐ろしいのですが、それだけではなく物悲しさも感じます。


このテーマの作品は良く見かけますが、登場人物の心理も含めて、ここまでしっかり描き出しているものは少ないです。

上手い表現が見つからないのですが、いわゆる”ゲーム的”な話になっていないのが良いのかな、と。

ミステリとしての仕掛け以上のものがあるように思いました。


間違いなく、今でも読む価値のある作品です。

後期クイーン論などは一旦置いておいて・・・・・・・。

ミステリ、というよりも、普通の小説の感覚で読み始めるのが良いかな、と。

決して派手ではないのですが、心に残る本ではあるでしょう。

ミステリ読み始めの頃に出会いたかったなあ、と久々に感じた一冊でした。7点