多崎礼 「煌夜祭」
- 多崎 礼
- 煌夜祭
十八諸島の世界を巡り、世界各地で話を集め、他の土地へと伝え歩く。それが我ら語り部の生業。
冬至の夜、我らは島主の館に集い、夜を通じて話をする。それが煌夜祭―年に一度の語り部の祭。
お話ししよう。夜空を焦がす煌夜祭の炎壇でも照らすことの出来ない、真の闇に隠された恐ろしい魔物の物語を…
廃墟となった島主の館で、今年もまた二人だけの煌夜祭が始まった―!
◆ ◆ ◆
傑作です。
早くも、2007年のベスト10に確実に入りそうな作品が出てきてしまいました。
多少なりともあらすじ等で興味を引かれる要素があったなら、以下の文章には目を通さず即購入することをお勧めします。
さて、本書。新人の作品ですが、さすがに投稿歴十七年というだけあって、よく練ってあります。
ジャンルは、連作短編形式のファンタジー。
しかし本書の最大の見所は、どちらかといえばファンタジー要素とは別なところにあります。
何が凄いかと言えば、ミステリでよく見られる、”あの趣向”が、ベストといっても過言ではないような形で決まっていることです。
ミステリに限りなく近いファンタジー、と言えば良いでしょうか。
加納さんの連作短編などが好きな自分にとっては、最高の一冊でした。
新人とは思えないほどこなれた文章と併せて、リービリティは非常に高く、序盤から引き込まれます。
一つ一つの語り部の話=短編をとっても、決して手抜きはなく、どれも魅力的な話に仕上げてあります。
これだけでも十分凄いのに、ラストは・・・・・・。
よくぞここまで、と。素晴らしい、と言うしかないでしょう。
この手の趣向に付きものの、ある種の複雑さはありますが、わかりにくいといったことはありません。
最終的に浮かび上がる、この物語の真の構図には心の底から感心しました。
本当、レベルが高いです。
読後感も非常に良く、その点でもお勧めです。
とりあえず、東京創元社系の連作短編が好きな人は、是非とも読んでみてください。
絶対に損はしません。
まあ、あくまで「ミステリに限りなく近い”ファンタジー”」ではあるのですが。
受ける印象は、完全にミステリそのものです。
ファンタジーが苦手な人でも、割とすんなり入れると思います。
ミステリとかファンタジーとか、そういったことをおいておいても、物語や登場人物自体がとても魅力的で、話に身を任せているだけでも心地良いですし。
次作が出たら、間違いなく”買い”です。
今後の可能性を大いに期待させてくれる作品。9点。
まだ知名度はそれほど高くなさそうですが、そのうち有名になるかもしれません。