三浦綾子 「塩狩峠」 | The Key of Midnight

三浦綾子 「塩狩峠」

三浦 綾子
塩狩峠
結納のため札幌に向った鉄道職員永野信夫の乗った列車が、塩狩峠の頂上にさしかかった時、突然客車が離れ、暴走し始めた。声もなく恐怖に怯える乗客。信夫は飛びつくようにハンドブレーキに手をかけた…。
明治末年、北海道旭川の塩狩峠で、自らの命を犠牲にして大勢の乗客の命を救った一青年の、愛と信仰に貫かれた生涯を描き、人間存在の意味を問う長編小説。
 
 ◆ ◆ ◆
 
大変知名度が高い小説だと思います。キリスト教を背景に、一人の人間の生涯を綴った作品。
カトリック系の学校に通っていながら、今更読了しました。
何となく、タイトルやあらすじで読みにくそうな印象があったのですが、
実際に読んでみると、あまりの読みやすさに驚きます。
特に目立って大きな展開もなく、いたって普通の文学といった感じなのですが、何故か読んでいて面白いです。
僕自身、全くキリスト教に興味は無いとはいえ、すんなりと物語に入っていけましたし。

本書は、良く「感動した」「泣いた」といった感想を目にするのですが、
確かに、最後まで読むとそう言われる理由もわかります。
何より、「感動させよう」という意図が感じられるような物語ではなく、自然な帰結でこのような形になっているのが素晴らしいと思います。
しかし、自分は感動というよりはむしろ、考えさせられることのほうが多かったです。
特にキリスト教というものに思い入れはないのですが、この小説のラストが本当に「救い」なのかどうか。
あらすじにも書かれているラストですが、これが果たして最も良い終わりだったのかどうか、疑問が残ります。
全員が幸せになれたか、といわれれば、やはり違うと思いますし・・・・・・。
もっとも、そのような終わり方だからこそ、これほどまで多くの人に支持されているのでしょう。
安直はハッピーエンドではなく、だからといってバッドエンドでもなく。
読んだ人の心に残る物語です。

宗教関係の話は苦手、という人もいるでしょうが、本書は宗教よりもむしろ、人間の生き方そのものにスポットがあてられています。
多くの人にとっては、すんなりと受け入れられる話ではないでしょうか。
8点
ところで本書、実際にあった話を元に書かれているというのは有名な話ですが、
自分がこのような状況にあったら、と考えると・・・・・・。
やはり素直に、このような生き方は凄い、とし言うほかないですね。
少し、読んでいて辛くなりました。