東野圭吾 「眠りの森」 | The Key of Midnight

東野圭吾 「眠りの森」

東野 圭吾
眠りの森
美貌のバレリーナが男を殺したのは、ほんとうに正当防衛だったのか?
完璧な踊りを求めて一途にけいこに励む高柳バレエ団のプリマたち。美女たちの世界に迷い込んだ男は死体になっていた。
若き敏腕刑事・加賀恭一郎は浅岡未緒に魅かれ、事件の真相に肉迫する。
華やかな舞台の裏の哀しいダンサーの悲恋物語。
 
 ◆ ◆ ◆
 
加賀恭一郎もの。
「赤い指」では加賀の家族の話が書かれていましたが、
こちらは加賀の恋愛がメインになっています。
「赤い指」で彼の格好良さは十分に知っていたつもりでしたが、本書でもまた、思っていた以上に格好良かったです。
これほど格好良い刑事は、小説の中でもなかなか見ないですね。
東野作品の登場人物の中では一番好きです。

本書は、あくまで真っ当なミステリですが、伏線の張り方や展開の仕方、解決などが抜群に巧いです。
「綺麗なミステリ」の見本のような作品でしょう。
ストーリー性とミステリ性が見事に結びついています。これは東野作品の特徴でもあると思いますが、この作品の場合、特にその融合が完璧に為されています。
一般の人にあまり馴染みが無いであろうバレエの世界を徹底して描き、その上で物語を展開させているのですが、この「一般に知られていない世界を描く」というのも東野さんらしいですね。
未知の世界にもかかわらず、気がつくとその中に引き込まれてしまっているのです。
真相にも、この「バレエの世界」が深く関わっています。
特に動機部分。
犯人は分かっても、この動機部分が読める人はなかなかいないのではないかと思いますが、
物語的にも印象深い動機です。
あらすじにもありますが、色々な意味での「悲恋」物語なのですね。

ラストシーンは感動的。
真相を解き明かすシーンが、ただひたすらに切ないです。
ラスト2ページ、加賀の台詞と行動に、やはり泣きそうになってしまいました。
ハッピーエンドと断言できるようなエンディングではないものの、希望が確かにあります。
東野作品で一番美しいラストではないでしょうか。

ミステリとしても物語としても素晴らしい一冊でした。
「容疑者X」より、遥かにこちらのほうが「恋愛小説」だと思います。
東野作品の中では、今のところ一番お勧めできる小説です。
9点