古橋秀之 「ある日、爆弾がおちてきて」
- 古橋 秀之, 緋賀 ゆかり
- ある日、爆弾がおちてきて
「人間じゃなくて“爆弾”?」「はい、そうです。最新型ですよ~」。
ある日、空から落ちてきた50ギガトンの“爆弾”は、なぜかむかし好きだった女の子に似ていて、しかも胸にはタイマーがコチコチと音を立てていて―
「都心に投下された新型爆弾とのデート」を描く表題作をはじめ、「くしゃみをするたびに記憶が退行する奇病」「毎夜たずねてくる死んだガールフレンド」「図書館に住む小さな神様」「肉体のないクラスメイト」などなど、奇才・古橋秀之が贈る、温かくておかしくてちょっとフシギな七つのボーイ・ミーツ・ガール。
◆ ◆ ◆
傑作。
こういう作品を待ち望んでいたのです。
7話の短編が収録されていますが、どれをとっても外れがない。
読後感が良いものがほとんどです。
そして、これが重要なのですが、
この短編集に収録された作品には、ある一つのテーマがあります。
それは、全てが「時間もの」(一応伏せます)のバリエーションである、ということ。この時点で、自分にとってこの小説が「傑作」となるのは、ほぼ確定したようなものでした。
その設定自体はどれもありがちなのですが、この趣向のおかげで、全体がまとまった印象になっています。
特に、一話目の「ある日、爆弾がおちてきて」で始まるこの物語が、最終話「むかし、爆弾が落ちてきて」で閉じられる瞬間――。
今まで互いに独立だった短編が、一つの大きな物語として「収束」したような、そんな思いが湧いてきて、
鳥肌が立つほど感動しました。
これ以外はありえない、というほどに本書に相応しいエンディング。
読了後、これほど爽やかな気分になったのは久しぶりです。
また、先に書いたとおり、一つ一つの短編を単独で読んでいっても「これは良い!」と思わせられるものばかりです。
「ある日、爆弾がおちてきて」は、奇妙な設定と切ないエンディングに。
「おおきくなあれ」は、展開のユニークさとラストの衝撃に。
「トトカミじゃ」は、心が温まるようなストーリーとオチに。
「三時間目のまどか」は、期待通りの美しい結末に。
どれも、本当に感嘆しました。
・・・・・・って、結局は全部「オチが良い」ということなのですが。
勿論それだけではなく、途中の展開も面白いです。
冒頭数ページから惹き付けられます。
この書き方は見事。
ライトノベルなのでイラストも挿入されていますが、別に読む上で引っ掛かりを覚えるようなものではありません。雰囲気にあったイラストだと思います。
ただ、このイラストで手にとるのをためらってしまう人がいるかもしれない、というのは残念に感じます。
「ライトノベルだから」と敬遠しないで、多くの人に読んでほしい作品なのですが・・・・・・。
特に、SFものが好きだけれど、まだそんなに多く読んでいない・・・・・・という人にはぴったりだと思います。逆に、普段からSFを読みなれている方にとっては、物足りないと感じてしまうかもしれませんが。
割とショートショートなどが好きな人にも向いているかも。
ミステリではありませんが、ちょっと良い話を読みたい、という方にはお勧めの一冊です。
9点。
間違いなく、読む価値はあるでしょう。
(ちなみに、あとがきは作品を全部読み終えてから読んだほうが良いです)