道尾秀介 「向日葵の咲かない夏」
- 道尾 秀介
- 向日葵の咲かない夏
分類不能、説明不可、ネタバレ厳禁! エンタメ界激震、超絶不条理ミステリ。
終業式の日、学校を休んだS君の家に寄ってみると、彼は家の中で首を吊って死んでいた。
慌てて学校に戻り、先生が警察と一緒に駆け付けると、なぜか死体は消えている。
混乱する僕の前に、今度はS君の生まれ変わりとやらが現れて訴えた。
――僕は、殺されたんだ。
何がなんだか分からないまま、僕と妹・ミカの一夏の冒険が始まった。
◆ ◆ ◆
帯にかかれた「本気で物語をつくるっていうのはこういうことさ!」という言葉と、印象的なタイトル、そして「生まれ変わり」ものらしい、という情報から、これもまたそれほど事前情報なしに読んだ作品(ちなみに、帯の言葉は読了後に改めて見るとかなり納得できます)。
最初に言ってしまうと、これは感想の書きづらいタイプのミステリです。
とまあ、こんなお決まりの文句を書いてみた時点で大方の人にはある程度どういう作品なのか想像がついてしまうかもしませんが。
でも、これは非常に斬新なトリック。
似たものはいくつかあっても、これは飛びぬけています。同じトリックは少なくとも見たことがない。
実際の世界では起こりえないような現象を、上手く作品にとりいれている、というのはSFミステリっぽいですね。
あくまで作品世界のルールに忠実なので、このトリックは「あり」でしょう(尤も、「ルール」が少しあやふやではあるのですが。この点は少し不満かも)。
個人的に、「生まれ変わり」が出てくるとどうしても疑ってしまうある事柄があるのですが(もう何パターンも目にしてきたため)、
そのおかげで、トリック自体は「こんな感じなのか?」と少し想像はついたものの、解決で明かされる真相は予想を軽く上回っていました。
仕掛け自体には思わず笑ってしまったのですが、これは驚きます。
少なくとも、真相の全てを見抜ける人はいないでしょう。
大体、こういった作品群は、少し疑いながら読んでいくと途中でトリックが割れてしまうことがしばしばあるのですが。
これはおそらくほとんどの方が無理です。
なので、ある程度すれた方にもお薦めできます。
驚きを求める人にはぴったりの作品。
怒る人もいるかもしれませんが。バカミスっぽいのも確かですし・・・・・・。
また、トリック抜きでの話ですが、内容が少し重いです。
いじめやら虐待やら・・・・・・。そういった類のものが作品全体のあちらこちらに満ちていて、読んでいて「痛い」と感じてしまう部分もいくつか。
それが気になる人には、少し辛いかもしれません。
でも、ミステリが好きなら読んでみて損はないです。
そうでない人も楽しめるでしょう。
来年度の「このミス」などにランクインしてもおかしくない作品。
8点。