あせごのまん 「余は如何にして服部ヒロシとなりしか」
- あせごのまん
- 余は如何にして服部ヒロシとなりしか
クリクリとよく動く尻に目を射られ、そっと後をつけた女は、同級生服部ヒロシの姉、サトさんだった。
ヒロシなら、すぐ帰ってくるよ―。
風呂に入っていけと勧められた鍵和田の見たものは、緑色の張りぼての風呂桶。
そこに裸のサトさんが入ってきて…。
ゆっくりと自分が失われていく恐怖を描く、第12回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作。
◆ ◆ ◆
日本ホラー小説大賞は、個人的に結構注目している賞で、
本書は第一次選考結果が発表されたときからタイトル、作者名が印象強く気になっていたものです(長編ですが、「子猫を食べる」もインパクト強かった・・・・・・でも受賞には至らず)。
尤も、タイトルの印象が強くても中身が面白くないといけないわけで。
本書には四つの短編が収録されており、どれも方向性は違うものなのですが、そんなに「面白い」と思える作品はなかったかな・・・・・・。
というよりは、文章が苦手です。この人の。
言葉のセンスなんかもそうなんですけど・・・・・・。
表題作は、ホラーといっていいのかどうか迷いますが、とにかく奇妙な話。
これがまた・・・・・・。つまらない、というわけではないのですけど。少なくとも読んでいていい気分はしません。これは他の作品すべてにもいえます。
オチもあるのかないのか良くわかりませんし、なんだか読んでいてネタを継ぎ接ぎして作ったような短編だ、と感じました。
二つ目の「浅水瀬」がこの短編集の中では一番面白かったです。
ただ、これも怪談話をまとめて一本の短編にしたような感じで・・・・・・。しかも最初の数ページが読んでいて疲れます。作者はバイクマニアなのでしょうか。
それでも、この短編は変わった味があっていいです。
次の「克美さんがいる」は、嫌な感じ。読んでいて気分が悪いです。もしかしたら、それが作者の狙いなのかもしれません。それなら成功している、ということになるのでしょうが・・・・・・。
ちなみに、一番ミステリっぽい作品です。オチが小林泰三を思い出させるような一編。
最後は、タイトルがすごいですね。
「あせごのまん」。
作者名と同じ名前をつけた作品、というのは初めてみました・・・・・・。
どこか、民話っぽい話で、どこの言葉なのかはわかりませんが全て方言で綴られています。
これを読むと・・・・・・。なんでこの作者は「あせごのまん」というペンネームをつけたのか、気になって仕方がないのですが。
ペンネームが合って、この物語を考えたのか、それとも物語を作ってからこの名前にしたのか。
どちらにしろ、何でそんなことをしたのか気になります・・・・・・。タイトルが一番面白い作品。
この作者、「独特の味」がある作品ばかり書いているようですが(このミス大賞に応募していた作品もかなり奇抜な設定だった・・・・・・)、ただそれだけ、のように思えてしまうのがなんとも。
一つネタを思いついたから、それだけで小説にしてみました・・・・・・という感じなんですよね。少し残念です。
別に小林泰三さんや朱川湊人さんのレベルを期待していたわけではないのですが。
次が出ても読むかどうかは微妙。扱っているネタは面白いので、それ以外の部分が良ければ・・・・・・。
5点です。奇妙な話が好きな人は読んでみても良いかもしれません。