若竹七海 「スクランブル」
- 若竹 七海
- スクランブル
80年代、16歳の冬。女子高のシャワールームで死体が発見されるが、事件は未解決。
15年後、文芸部員だった6人の仲間が結婚式で再会、事件の真相は明かされるのか。
学園ミステリー長編!
◆ ◆ ◆
以前「若竹七海さんの作品はほとんど読んだことがない」と漏らしたときに、さかきさんにお薦めをもらった本。
ジャンルからあらすじまで、何一つの事前情報もなく読んだのですが(ハードカバー版で手にとったのですが、カバーのどこにもあらすじが書いていなかった・・・・・・)、途中までは長編小説かな? と思っていたら、連作短編なのか・・・・・・・いや、やっぱり長編なのか? と、色々と混乱・・・・・・。
さすがに二章目を読み終えたときには全体の構成はつかめたので、問題はありませんでしたが。
連作短編のようなつくりでもあり、長編でもある、というのが正しいのでしょうか。
卵の調理方法にちなんだ章が5つあって、それぞれに一つの小さな謎が登場し、その章の中で解決される。
また、それとは別に全体を貫いている謎――シャワールームで起きた密室殺人事件――があり、これが本書のメインでしょう。
ほぼ全編が「過去の回想」形式になっており、「現在」パートでは結婚式の様子が描かれるのですが、この結婚式における花嫁が誰なのかは最後まで明かされません。
同時に、現在パートの最初で「金屏風の前に犯人がいる」という描写が出てきて、もちろんその名前は最後まで明かされないのですが、語り手がどんどん変わっていくために「金屏風の前にいる人物」が絞られてきて、犯人が推測しやすくなります。・・・・・・当てられませんでしたが。
花嫁も犯人もそこまでの意外性があるわけではありませんが、それでも作品としては面白いです。
青春小説とミステリが上手く合わさっていて、それも青春小説部分がやたらと「クール」なんですよね。
爽やかではないのですが、若竹さんらしい独特の冷やりとした感覚が全体を覆っています。
これが何とも不思議な感じ。
やはり、「クール」としか表現できません。
でも好きです。
ミステリ部分も面白いのですが、青春小説としてみたほうが個人的には楽しめる一冊でした。
高めの7点。