田代裕彦 「平井骸惚此中ニ有リ 其貳」 | The Key of Midnight

田代裕彦 「平井骸惚此中ニ有リ 其貳」

田代 裕彦
平井骸惚此中ニ有リ〈其2〉

那須の一等地にあるホテルで休暇、という避暑のお誘いに一も二もなく飛びついた骸惚先生(と河上くん)だが、華族・日下家の遺産問題に絡んだ事件に巻き込まれることに――。

折からの嵐により密室と化した洋館で、次々に謎の死を遂げていく日下家の跡取りたち。

絡まる華族たちの思惑は、更なる事件を呼び起こす……。

大正十二年を舞台に、探偵作家・平井骸惚の活躍(おまけで弟子の河上くん)を描く、本格ミステリの第二弾!

 

 ◆ ◆ ◆

 

一巻の感想で、「もう少しミステリ部分が凝っていたらよかったのに」と書きましたが、本書は十分それをクリアしていました。

前回同様の古めかしい独特の文体と、魅力的なキャラクターたちの掛け合い。

そして、「嵐の山荘」状態のクローズド・サークルで起きる殺人事件。

読みやすく、普通に面白い。

また、ミステリ部分もやっぱり良く考えられている。

前例はあるものの、面白いトリックで、

真相(犯人といったほうが良いか)が明かされたときに、一番最初に思い浮かんだのは某有名アンチ・ミステリなのですが、正直こちらのほうが納得しやすいです。

動機などを含めて「これなら、それだけのリスクを犯してもおかしくないか」と思えたので。

少なくとも、十分読者を納得させるだけの力はある真相です。

また事件自体とは別のところで、平井骸惚の語る「考え」が興味深く、これも一つの見所でしょう。


ライトノベル・ミステリの中でも、この人が書く作品は、特に本格の度合いが高いと思います。

米澤穂信さんや桜庭一樹さんとともに、ライトノベルが好きな人にも、ミステリが好きな人にも受け入れられる作家ではないかと。

まだ未読の人は、「キリサキ」か「平井骸惚此中ニ有リ」か、どちらか手にとってみることをお薦めします。

少なくとも、ミステリが好きならつまらないということはないでしょう。

本書の評価は7点。残り三作も、これなら期待できそうですね。