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☆内容紹介
ある朝目ざめると青年ザムザは自分が1匹のばかでかい毒虫に変っていることに気づいた。
以下、虫けらに変身したザムザの生活過程がきわめて即物的に描かれる。
カフカ(1883‐1924)は異様な設定をもつこの物語で、自己疎外に苦しむ現代の人間の孤独な姿を形象化したといえよう。20世紀の実存主義文学の先がけとなった作品である。
☆感想
「臭いものには蓋」
まさにグレーゴル・ザムザの処遇。
朝目を覚ますと巨大な虫になっていた。
そんな奇々怪々なストーリーに引き込まれ、虫になってからも現実的な心配を抱え謙虚な姿勢を貫くグレーゴルや社長の驚く様子なんかが可笑しくて笑ったが、中盤からは切なくて言い切れない気持ちになった。
自分を恐れ、嫌悪し、次第に無関心になっていく家族に対し、憎むわけでもなく、妹を学校に行かせられなかったことを後悔したりするグレーゴルが可哀想でならなかった。
妹ははじめ、グレーゴルの身の回りの世話をしたり、気遣ったりしていたようだけれど、ここに出てくるグレーゴルの家族は全員結局は自分のことしか考えていなかった。
妹や母親が時折見せた慈悲に似た行動も、自分を許すための償いという感じがした。
自分を苛む不幸の元凶がグレーゴルにあると信じ込む家族、変身後にそれぞれ職を見つけ、グレゴールの死後社会にでていく様は、何かをスケープゴートにしてでも、見たくないものから目をそむけてでも、自分の利益を持とうとする資本主義社会の闇の部分を表しているように感じた。
一見寓話のようなこのストーリーはものすごく現実的な社会に対する皮肉なのではないかとも思えた。
読了後もあとをひくもやもや。
なぜ虫になったのか?
なんですぐにみんなその虫がグレゴールだと信じたのか?
いろいろ疑問が残った。
摩訶不思議小説ぐらいにしか思っていなかったけれど、実際読んでみたらとても切ない物語でした。
小説に長い解説があったことからしても、カフカの生涯について知れば知るほど深みが増すのだろうなあと思った。父親のイメージとか。
「虫」というのは時代にとらわれることなく、さまざまな対象に当てはめられる。
問題なく生きていた人間が突然使い物にならなくなったら。
目もあてられない存在になってしまったら。
そう考えると、とても恐ろしい。
虫というキーワードはどの世界、どの時代にも通じる陰の象徴なんだとわかった。
難しいことはよく分からないので、とりあえず率直な感想でした。