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☆あらすじ
姉とその娘が大阪からやってきた。三十九歳の姉は豊胸手術を目論んでいる。姪は言葉を発しない。そして三人の不可思議な夏の三日間が過ぎてゆく。第138回芥川賞受賞作。
☆感想
まず冒頭を読んですごいと思った。最後まで読んで息を呑んだ。という感じ。
以前この著者の「ヘヴン」を読んで、うん?と首をひねったけれど、この作品はとにかく衝撃的だった。
まずこんな文体はみたことがない。
単に私の読書量が少ないってこともあるけれど、今まで読んだ本の中では一番特異な本のような気がする。
確か著者は樋口一葉を読みまくったとかいってたっけ。かくいう私は樋口一葉を読んだことがないからその点なにも分析できないけど(笑)
きっとこの著者には、標準語より方言のほうが合っているんだろう。
流れるような文章なのにぐさりぐさりとくるんだよね。
豊胸手術をして少なくとも子どもを生む前の身体に戻りたいと願う巻子。声で会話ができなくなる緑子。
女であること、母と子、人を産むということにおける矛盾というか、真理みたいなものを突きつけられる。 緑子の苦悩は思春期ゆえの「成長に対する嫌悪感」とか、そんな簡単なものではないように思える。
巻子も緑子も存在意義を模索して、「なかったことにする」ことを求めている。
産むことも産まれることも誰かの意思とは無関係にただそこにあるのだと考えれば、ある意味自分という生き物が何にも左右されないひとつの確実な存在として認識できるのかもしれない。 しかし、それは孤独。
誰の意思もなくここに在るということは、生れ落ちてからの自分だけが、自分を望んでいる確かな存在というわけだから。
でもやっぱり誰かが望んでいるからこそ、人間はその産んだものと産まれたものを、親子とか母子とか血縁関係とか規定したがるのではないか。なんてことを思った。
なんだか自分で書いていて、よくわからない。
この本はさらっとまっすぐに想いをぶつけたのが形になったものにも思えるし、考えに考え抜いて引きずり出したもののようにも思える。
こういうのが本当にその人にしか書けない作品っていうんだろうなあ。
久しぶりにヤマとかオチとかそんなのはどうでも良くて、すごい!という本を読んだ気がする。