夜と霧 /ヴィクトール・E・フランクル | 無題

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いろいろと

夜と霧 新版/ヴィクトール・E・フランクル

¥1,575
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久しぶりに、出会えてよかったと心から思えた本。
著者自身の強制収容所での体験と被収容者の心理が描かれている。

大学の先生が、精神的に余裕があるときに読んだ方が良いと言っていたから
少し身構えて読んだけれど、私にとっては希望を与えてくれる内容だった。
小説としてみれば理論的で、報告・分析としてみれば情緒的。
きっとこれが実際に被収容者であった者にとっての、できる限りの客観的考察なのだと思う。
ここまで冷静に苦しみを分析できたのは、これがフランクルに課された生きるうえでの責務だったからだろう。

アウシュビッツと聞いて思い描くのは、劣悪な環境で虐待され、酷使され、モノのように(もしくはそれ以下のように)扱われていたユダヤ人たちだ。
そこには夢も希望もなく、いつ解放されるかも分からない恐怖と憎悪にまみれていたと想像する。
確かに、その環境は最悪というだけでは生易しいぐらいのものだけれど、そんな絶望の淵にも希望はあったこと、愛はあったこと、悪もあれば善もあったという事実に驚かされる。

多くの者は過去にとらわれ、現在に打ちひしがれ、未来を放棄した。
一方、その過酷な状況下で、生きているかも不明な妻に思いを馳せて
「私の今の状況よりましだといい」「私の苦痛と死を引き換えに、妻を苦しませないでくれ」と願って、
自分の苦しみに意味を見出した人間や、
未来が未定だということに、光をみつける人間もいたという。

これ以上ない苦しみを苦しみ尽くしてフランクルが得たものは、苦しみ尽くさなかったものには発見し得なかった、「生きる意味とは何か」という問いに対する答えだった。

どんな言葉をつかってもうまく伝えられないので、引用したいと思います。

・人は、この世にはもはやなにも残されていなくても、心の奥底で愛する人の面影に思いをこらせば、ほんのいっときにせよ至福の境地になれるということを、わたしは理解したのだ。
収容所に入れられ、なにかをして自己実現する道を断たれるという、思いつくかぎりでもっとも悲惨な状況、できるのはただこの耐えがたい苦痛に耐えることしかない状況にあっても、人は内に秘めた愛する人のまなざしや愛する人の面影を精神力で呼び出すことにより、満たされることができるのだ。
(61頁)

・もういいかげん、生きることの意味を問うことをやめ、わたしたち自身が問いの前に立っていることを思い知るべきなのだ。生きることは日々、そして時々刻々、問いかけてくる。わたしたちはその問いに答えを迫られている。考え込んだり言辞を弄することによってではなく、ひとえに行動によって、適切な態度によって、正しい答えは出される。生きるとはつまり、生きることの問いに正しく答える義務、生きることが各人に課す課題を果たす義務、時々刻々の要請を充たす義務を引きうけることにほかならない。(129、130頁)

・人間が生きることには、つねに、どんな状況でも、意味がある、この存在することの無限の意味は苦しむことと死ぬことを、苦と死をもふくむのだ(138頁)

これを読んで分かるのが快楽主義を否定していることだ。
生きる意味を幸福や快楽という尺度ではかっていてはいけないということだと思う。
もしその考えを捨て去れば、永遠に幸せになる見込みがない、生きている意味がない、だから死ぬという決断には至らない。
フランクルに言わせれば、幸福も苦しみも同じ価値の生きる意味に違いない。
その人がその人であること、その人しか経験できない苦しみを受け容れること自体が、かけがえのないことで、価値があることなのだと……うん。洗脳されました。

でもこれは、ニヒリストになりつつある自分にとって良い教訓になった。

今は大分立場が逆になっているユダヤ人(アメリカのユダヤ・ロビー等々)の言動から、「ユダヤ人」という集団全体を偏見の目で見ていたことも反省した。
アメリカの善悪二元論を否定しておきながら、自分はだいぶ集団を集団として善悪のカテゴリーに分類していた。

収容所にはパンをこっそりと分け与えてくれた人間らしい親衛隊もいた。
下からの選抜によってカポー(監察兵)となったサディスティックな被収容者もいた。
人間としてどう生きるかという自由はだれにも奪えないという事実。
その事実がある限り、どのような立場、人種であるかだけでは「ひとりの人間について何も語ったことにならない」。
善悪の「境界線は集団を越えて引かれる」
ということを思い知らされた。

アンネ・フランクの伝記を読んだだけでは知りえなかったことを学んだ。
機会があればもう一度読みたい。
心理学者として語られる文章なのでそこまで宗教的ではないし、
薄くて大きい字で平易な言葉で書かれているので是非読んでみてください。