9/12
「大阪クラシック」は、「お祭り」なのか、それとも「公演」なのか・・・。
以前、この催しでの演奏の出来について書いた記事に対して、「お祭りなのに、ああだこうだ批評めいたようなことを書くのは、無粋なのでは?」と、匿名でのコメントを頂いたことがありましたが、果たしてそうでしょうか・・・。そういうご意見こそ、芸術家に対し失礼だと思いますが。
第1公演は、まあ「お祭りの初っ端」のようなものでしょうが、選曲・演奏共に、あまり褒められるようなものではなかったですかね。
生誕・没後100年の2人の作曲家の作品を無理やりまとめたような公演でしたが、文字通り「水と油」のようなドビュッシーとバーンスタインの作品を、単に交互に演奏すると言うのは、かなり無理があるプログラムのように感じました。当初、発表されていたプログラムには、当日演奏される全ての曲目が書かれておらず、この2人の作曲家をつなぐ「何か」が隠されているのでは、と思い、密かに楽しみにしていましたが、そのような「シークレット」も、残念ながらありませんでした・・・。
「キャンディード」序曲、楽譜に書かれているスタッカートの「キレ」が演奏では感じられず、腰の重い冒頭から、幾分憂鬱になってしまうような演奏・・・。練習時間が短かったのかも知れませんが、ルーティンの範囲での演奏では、感動も有難味も感じられないですね。コーダからのアッチェルランドも「お約束」と言った感じで、大植さんらしい鮮烈さも感じられず、残念ながら、面白みの少ない演奏でした。
「牧神~」、冒頭の田中玲奈さんのソロの素晴らしさには驚かされましたが、揺蕩うような、あるいは澱むような曲なのに、大植さんの指揮では、「譜面」が眼前に浮かんで来てしまうような、言い換えれば譜割りが指揮の打点や身振りでわかってしまうかのような、恣意的で何とも味気ないような音楽で、雰囲気も何もない、そんな残念なドビュッシーでした。
「キャンディード」組曲、曲自体がそれ程面白いとも思いませんが、大きな括りに於いては、それなりに楽しめたでしょうか。ただ、楽器間での同じ音符の処理方法が異なっていたり、和音が唸っていたりと、細かい部分を取り上げれば、やはり揉み込みの足りないような演奏だったように感じ、これも残念に思いました。
わずか45分程度の演奏で2,000円も取るんですから、もっと鮮烈で踏み込んだ演奏を期待したいものです。

この日、ドビュッシーで素晴らしいフルートソロを聴かせて下さった田中 玲奈さんですが、そう言えば、彼女がPAC1年生の時に頂いたサインを見つけました。もう5年も前のことになるんですね・・・。懐かしい思い出です。
9/13
藤木 愛さんは、PACに在籍されている時から存じ上げていましたが、その頃のメンバー紹介の冊子には、ルクーのソナタがお勧め、と書かれていました。2年程前にお話しした時に、ご自身がお好きなこの曲を、ぜひ近い内に聴かせて欲しい、とお願いをしていましたが、今年の「大阪クラシック」で、それがいよいよ実現しました。彼女のファンとしてうれしい限りです。
演奏は、そんな彼女の思いが詰まった素晴らしいもので、決して派手なパフォーマンスではありませんでしたが、彼女らしい品の良さ、実直・素直さがにじみ出た、とても心に沁みるものでした。特に第2楽章での、淡々とした歩みの中に聴かれる濃密で密やかな唄(この楽章、ヴァイオリンには何と26小節も休符が無いんです。後半も同様に26小節休符が無い。だから語って行くのが難しいんです・・)は、誰しも心を揺さぶられたのではないでしょうか。
第1楽章の冒頭5小節目や、練習番号2の小節などのような「3連符の運び」が、もうほんの少し豊かなものであれば、更に立派な演奏となっていたとも思いますが、この曲の演奏が今回で終わりではありませんし、そんな個人的な希望は、今後再演をされる時のお楽しみとしておきたいと思います。
沼光 絵理佳さんのピアノも、もう何度も聴かせて頂いていますが、藤木 愛さんとは東京芸大の同級生だったと言うご縁で、今回の共演となったようです。会場の音響がピアノに有利に働く感じもあり、ピアノの屋根は半分閉じるぐらいの方が、バランスが取れたようにも思いました。実際に、少しピアノ(特に低音域)が強いように感じましたし・・。次は、ホールのような更に音響の良い場所で、お二人の共演をお聴きしたいものです。
それから、運営に対してのお願いですが、演奏中の入場は、仮に認めるにしても、後ろで立って聴かせるなど、席に座っている先客への配慮をお願いしたいものです。演奏中に前を遮って座席に誘導するのは、如何なものでしょう。そんなお客さんに限って、終演の瞬間に、真っ先に「ブラボ」の大きな叫び声を上げられるんですよね。これって、ホント、どうかしてると思います。
9/16
第1楽章は♩=152 のところ、恐らく120前後、第3楽章も♩.=176 のところ、150前後と、共に楽譜に指定されている速度よりもかなり遅く、常識で考えれば「遅すぎるのでは」となるのですが、実際には、曲の良さ・性格・中身・音の絡みをじっくりと聴かせるような、とても親密・丁寧・親切で、ゆとりとアンサンブルの良さ、そして音楽に対する愛情の感じられる、大変素晴らしいものでした。3人の奏者それぞれが優れた奏者であることや、じっくりと時間をかけた練習の成果と言うこともできるでしょう。「音楽」と言うは、これでなくては。
柏山 七海さんのヴァイオリン、力みが全く無く、自然体で弾かれる楽器からは、実に堅実で渋い音が聴こえて来ました。好みのヴァイオリンですし、こんな音楽を自分でも弾けたらなあ、と、大変うらやましく感じました。3人の仲の良さも、この日の素晴らしいアンサンブルの源なのでしょうか。個人的にとても気に入った公演で、聴きに伺って良かったです。
画像は、リハーサルから。
時間が出来、聴きに伺いました。
昨年の「大阪クラシック」では、全く同じメンバーで、この曲の演奏がありましたが、それは聴きに伺えず、この日がこのメンバーでの初聴きとなりました。偶然、直近に近藤さんにお会いした時に、なぜ同じメンバーで同じ曲を演奏されるのか、などと言う愚問をしてしまいましたが、それは演奏前の彼の前説で率直に明かされました。
演奏は、私が座った席のこともあり、バランス的にどうかなと言う場面もありましたが、さすがに練れたアンサンブルで、満足しました。第4楽章は、若書きのブラームスの悪い面が出ているような、少し退屈な部分が続きますが、この日の演奏では、楽譜には無いルバートやアクセントを駆使し、弾き手自身飽きないよう、そして聴き手にも飽きさせないような演奏で、優れた奏者の演奏を聴く価値を十分に感じさせて頂きました。
アンコールは、第4楽章の最後の部分が再び演奏されましたが、1st.ヴィオラの木下さんが主導する「animato」を、彼独自の異なる解釈で、と言う感じでしたが、ここは「accelerando」ではないことを、この日の2度の演奏で再確認させて頂いたようなもので、音楽が徐々に息づいて行く過程を、異なる速度と弾き方で聴かせて頂きました。大変示唆に富んだ本編&アンコールで、「弾き比べの面白さ」を眼前に示して頂いた、興味深い公演でもありました。
他にも、いくつかの公演を聴きに伺いましたが、頭のおかしい男のこともあり、これ以上の記事は控えたいと思います。













