毎年、日本音楽コンクールの前の時期になると、予選出場予定者の方が、その年の課題曲を事前に弾いて置きたいと言う趣旨での公演が多く開かれます。通常行われる公演と違い、プログラミングが散漫になりがちですし、公演を通じての選曲の「意図」も感じられ難く、それを知らずに聴きに伺う聴衆には、なぜこのような選曲なのかがわかりません。これは彼女に限りませんが、せめてコンクールとは関係の無い曲を挟むなりされ、奏者としての「矜持」のようなものを示して欲しいようにも思います。
彼女のヴァイオリンは、ソロではありませんが「スーパーキッズ」の頃からお聴きしていますし、ソロもこれまで2度程お聴きしています。また、私の娘が東京に住んでおり、昨年、彼女のシベリウスの協奏曲を聴かせて頂きました。
さて、彼女のヴァイオリンですが、とにかく音が太く、艶があります。東京芸大の澤 和樹学長の往年の演奏を彷彿とさせるような、そんな感じもします。他方で、音色的な引出しや音楽的な味わい、またヴァイオリンと言う楽器の持つ、独特の「切れ味」のようなものに幾分か不足するような印象で、曲を通してお聴きすると、少し飽きてしまうと言うような感じもあります。
この日の演奏は、正直申し上げ、まだ人前で披露されるには、かなり練り込みが足りないように感じました。その中では、モーツァルトの協奏曲の軽さは心地よく、タルティーニも水準を上回る演奏と感じました。一方で、パガニーニの8度の部分は、音を置きに行っているような印象で、音楽的な趣きが更に欲しいと感じましたし、ドビュッシーも、曲の持つ透明感、音色の多彩さ、曲の持つスムーズさ、曲を通じての見通しの良さのようなものが今一つ感じられ難く、今後コンクールまでの一か月間で、更に練り込む必要があるのではと感じました。イザイも、曲の持つスケール感が、幾分感じられ難かったでしょうか。
コンクール前の試奏を兼ねた公演をお聴きする時の難しさを感じた、そんな公演でした。星良さんの、本番での素晴らしい演奏、そして結果を、心より願っています。
イザイの譜面に、サインを頂きました。星良さん、ありがとうございました。


