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最後に、本選をお聴きして、個人的に印象に残った演奏を演奏順に挙げさせて頂きます。
No.24 プロコフィエフ/ピアノソナタ第7番
No.10 プロコフィエフ/「風刺」
No.9 メトネル/4つのおとぎ話
No.5 ラフマニノフ/「コレルリの主題による変奏曲」
No.16 リスト/ピアノソナタ
本選に出場された皆さんには、同じ会場で開催されるリサイタルと言う機会で再びお会い出来ます。違ったプログラムをお聴きすることで、全く違った印象を持つことにもなると思いますし、直接お話も出来ますので、個人的にとても楽しみにしています。
出場された皆さん、お疲れ様でした。結果は結果ですが、3人の審査員の方の好みもあるでしょう。これから長い演奏家生活になりますから、今後のご研鑽の方が大切ですよね。更に成長されたお姿を、ぜひ次の機会に拝見出来ますことを、楽しみにしています。
これにて、今回のコンクールの記事を閉じたいと思います。多くの読者の方には、拙い感想にお付き合い頂き、ありがとうございました。
少し時間はかかりますが、本選に出場された皆さんの演奏につきまして、お一人ずつ個人的な感想を書かせて頂こうと思います。
審査員の方の情報を忘れていました。ギグラ・カツァラヴァ氏・釈迦郡洋介氏・木村文子氏のお三方でした。木村氏については、表彰式の際に経歴としてアナウンスのあった「ドイツ・フライブルグ」「2001年・マンハイム」等で検索してみましたが、ヒットするものがありませんでしたので、どのような方なのかは良くわかりません。
最後はNo.19の方ですが、お名前を聞き取れませんでした。日本の方ではないかも知れません。予選から弾かれた曲は、ドビュッシー・ショパン・スクリャービン・スクリャービン・ドビュッシー・ムソルグスキー。本選しかお聴き出来ませんでしたが、ドビュッシーでは、とてもドビュッシーらしい音色が聴こえて来て、なかなか楽しめたんですが、ムソルグスキーはちょっと曲になっていなかった感じでしょうかね。技巧的にもミスタッチが目立ちましたし、ご本人も焦りがあったんでしょうか、とにかく音楽が「急いて」しまっていました。冒頭のプロムナード、あれだけ速く弾かれたのをお聴きしたことがありませんでしたので、こちらもちょっと戸惑ってしまいました。曲毎それぞれのキャラクター付けも徹底されておらず、装飾音符の弾き方も曖昧で、この曲の演奏からは彼女の良いところが見つけられませんでした。もう少し落ち着いた気持ちで弾かれていたら、違ったかも知れませんが。彼女が本選に出場されるのであれば、個人的には別の方の演奏をお聴きしてみたかったですかね。
No.2の村田孝樹さん(お名前はご本人には確認しておりませんので、間違っていたらすみません。)、初めてお聴きする方です。予選から弾かれた曲は、リスト・ショパン・リスト・リスト・ベートーヴェン。弾かれる音楽そのものはとてもきちっとされており、相当な実力をお持ちの方だと思いますが、全体的に淡泊な演奏で、音楽的な抑揚をあまり聴き取ることが出来ず、小さくまとまってしまっていたと言う印象でした。コンクールと言うことを意識されていたのかも知れませんので、今後開催されるリサイタルをお聴きして、また新たな魅力に出会いたいと思います。
No.5の矢野百華さんは、京都市立芸術大学に在学中の方のようです。今回初めてお聴きしました。基本がとてもしっかりとされており、弾かれる音楽からはとても素直なピアニストと言う印象を受けました。失礼な言い方になりますが、「コンクール向き」の弾き方をされる方と言えるのかも知れません。予選から弾かれた曲は、シューマン・ショスタコーヴィチ・ラフマニノフ・バッハ・シューマン・ラフマニノフと言うことで、選曲からはロシア音楽がお得意のような感じでしょうか。素晴らしかったのは、ラフマニノフの「コレルリの主題による変奏曲」でした。しみじみとした「フォリア」の主題の提示以降、数々のテクニックを駆使する場面を乗り越えて、再びの静寂感の中終わると言う、人生にも似た構成を見せる難曲ですが、彼女は破綻なく見事に弾き切られたように思います。相当の力量が無いと、ここまで一気に聴かせられないでしょう。この曲が、こう言う取り組み方でも十分に聴かせられるだけの曲なのかも知れませんが・・・。シューマンは「幻想曲」の第1部のみ、演奏はシンプル・淡泊、いわゆる「紋切型」と言った感じで、もう少し音楽的な抑揚や思い入れが感じられる方が良かったでしょうか。この曲では楽器が思った程鳴っておらず、多少音そのものの魅力に欠けていた感じもあり、これでシューマンを弾くには少し辛い感じもしました。この曲では、全曲通してお聴きしないと、曲・演奏共に良さは発揮されませんよね。まだお若い方ですし、これからもっともっと彼女らしさが出て来られるんだと思います。今後の成長が非常に楽しみです。ご活躍をお祈りしております。
No.12の西恵里夏さんは、以前に演奏をお聴きしています。一次予選から弾かれた曲は、プロコフィエフ・シューマン・スクリャービン・シューマン・シューマンと言うことで、彼女のレパートリーの中心がシューマンにあると良くわかりますね。本選はシューマンの2曲でしたが、共に大阪のサロン等で定期的に演奏をされておられたりする弾き慣れた曲と言うこともあり、十分に練り込まれた感じは受けましたが、随所で見られる独特のルバートは聴く人の好みが分かれるでしょうし、練り込まれ過ぎと言うこともあるのでしょうか、曲全体を見通すと言うよりは、全体的に粘り気の強い演奏で、恣意的な感じが強く、幾分部分部分を強調し過ぎてしまっているような印象を受けました。さすがに第1部では曲と演奏スタイルが良く合っていまして、相当の秀演だったと思いますが、それ以降は集中力が途切れてしまわれたのか、ミスが目立ちましたし、ところどころルバートで音楽の流れが止まってしまうような感じを受けるスタイルの演奏は、私にはあまり好みではありませんでした。「献呈」も、もう少し流れのある演奏がお聴きしたかったでしょうか。こういうスタイルの演奏を評価される方も多いでしょうし、これが彼女の個性でもあります。あくまでも個人的な好み・印象ですので、どうぞお許し下さい。コンクールの本選と言う場面では、シューマン2曲弾かれるよりは、アンコール要素の強い「献呈」ではない、違った作曲家の曲を弾かれて、雰囲気を変えられても良かったかも知れませんね。実際にファンの多いピアニストですし、これからも幅広いご活躍を期待すると同時に、違ったプログラムで臨まれるであろうこの会場で行われるリサイタルを、楽しみにしたいと思います。
No.14の大坪健人さんは、この3月に京都市立芸術大学の大学院をご卒業されたばかりのピアニストです。この方の演奏は、たまたま一次予選でお聴きする機会を頂きました。ショパンの「木枯らし」、そして本選でも弾かれたリストの「夕べの調べ」でした。リストは、一次予選の演奏の方が断然良かったですかね。技巧的にも全く問題無く、しっとりとした詩情あふれる演奏は、本選出場を予感させてくれていました。本選ではかなりの緊張をされていた感じで、また、弾き慣れない「ベーゼンドルファー・インペリアル97鍵」と言う楽器に少し戸惑われていたようにも見えました。一次予選でも弾かれた「夕べの調べ」ですが、同じような右手の上向音形でミスを繰り返されていたのは、一体どうしてしまわれたんでしょう・・・。リストのソナタでも感じましたが、こういったコンクールでミスをするのは当たり前、それを引きずらずに、如何にリカヴァーして、更に伸び伸びと素晴らしい演奏で繋いで行けるのか、と言うことが大事ですし、主催されている村井代表も常々そのようにおっしゃっておられます。その点で、彼の本選の演奏は、ご本人も満足出来ず、残念だったのではないかと思う一方で、リストのソナタでは、やみくもに打鍵を繰り返すこと無く、人間らしい息遣いの感じられる奥深い演奏を展開され、直前に演奏された(金賞を受賞された)北端さんの演奏とは好対照なもので、大変興味深くお聴きしました。音そのものが深いですし、彼がこの曲を通じてやりたかった・表現したかったものは、十分客席に届いていたようにも思います。それだけに、ミスそのものの多さが残念でしたが、逆に良い反省材料にもなりましたよね。演奏後にいろいろとお話しさせて頂く機会を頂きましたが、その際、来月別の場所で、今回のコンクールで弾かれたものと同じようなプログラミング(リスト、ベートーヴェン「ワルトシュタイン」等)によるリサイタルをされるとお聞きしました。その時は、本選時の反省も踏まえ、更に素晴らしい演奏をして下さると思いますし、願っています。偶然にも、先日参加させて頂いた「さとのね第九」で、私の右隣でヴァイオリンを弾かれていた柴田咲さんと(卒業演奏で)共演されていると言う、そんな繋がり・ご縁のある方でもあります。今後の活動に注目して行きたいですね。来月のリサイタルのご成功、そして今後益々のご活躍を願っております。
銅賞に輝いた渡辺仁美さん。彼女の演奏はもう何度もお聴きしていまして、改めて私の感想などを記す必要のない、常に安定された実力を発揮されるお馴染みのピアニストです。本選ではドビュッシーの前奏曲集第2巻から抜粋で4曲、これらの曲は、全曲と言う形で以前リサイタルでお聴きしています。そして、非常に良く知られているプロコフィエフの第7番のソナタ。この曲は、3月のリサイタルでお弾きになっておられますが、生憎都合が付かずにお聴き出来ませんでした。これまでお聴きしたものとあまり変わりない感想になりますが、彼女の演奏は、色んな意味で無駄が少なく、とても筋肉質です。プロコフィエフが映えて聴こえるように思うのも、そう言ったところに大きな要因があるんではないかと思います。流石にこのソナタの演奏は素晴らしかったですよね。こういう「直線的」なプロコフィエフを一気に聴かせられると、もう「ぐうの音」も出ません。この日の演奏は、いつにも増して自信満々と言う感じで堂々とされ、技巧的にも申し分なく、大きなミスなく本番で結果を残せるのは、普段からの相当のご努力を想像させます。個人的には、もう自然な少し息遣いが感じられるピアノの方が好きなんですが、こうやって常にコンクールやリサイタルで平均以上の実力を発揮され、そして多くの方から評価されると言うのは、やはり素晴らしいことです。そして、最も感じたのは、「ベーゼンドルファー・インペリアル 97鍵」を弾き慣れている「強み」と言うことでしょうか。会場の音響にも慣れておられるでしょうし、そう言った「アドヴァンテージ」は、このようなコンクールと言う場面では、思った以上に大きいですよね。それから、表彰式には、歌手の妹さんをお連れになっておられ、彼女は銀賞を受賞された土屋絵葉さんの代理を務めておられました。このような「ウィット」もお持ちの方なんだと、改めて彼女の人間的な「大きさ」を実感しました。6月にはもう一度同じ会場でリサイタルを開かれるとのことです。どんな曲を披露して下さるのか、今から楽しみですね。今後益々のご活躍をお祈りしております。
受賞はなりませんでしたが、私が二番手の評価をさせて頂いたNo.9の藤田菜央さん、彼女のお名前をお聞きするのも、演奏をお聴きするのも今回が初めてでした。京都市芸術大学で勉強されておられるそうですね。本選では3曲弾かれましたが、1曲目のモーツァルト、彼女は楽譜に忠実にごく普通に弾かれていたように思います。バッハの作品にも通じるようなこの難曲、最初は「あまりパットしない面白くない演奏かなあ」と思いながら聴いていたんですが、曲が進むに連れ、段々と惹き込まれて行く感じなんですよね。何の変哲もないような普通で地味目の演奏なんですが、右手と左手のバランスに優れ、音の粒が見事に揃い、それでいて決して音楽が堅くならず上手に伸縮して行く・・・、とにかく音が素直で綺麗・・・。何か不思議な感覚でした。下でも書きましたが、モーツァルトが書いた装飾音符の処理や表現の仕方がとにかく素晴らしいですよね。控えめでもなく、かと言ってそこを強調され過ぎる訳でもなく・・・。それは彼女の優れた感性によって見事にコントロールされ表されているように思いました。その特徴は、続くショパンのバラード第1番でも同様。この曲でも全体的に品が良く、表現の過不足と言うものが無いんですよね。メトネルは初めてお聴きする曲でしたが、ご自分なりに良く練られた感じで、曲の雰囲気や彼女が表現されようとするものが、こちらにも十分伝わって来ました。音色の変化・多彩さと言う点で多少物足りないところはあるかも知れませんが、それが今の彼女の個性(饒舌過ぎず、聴き手に委ねられるような演奏)なのかも知れませんし、今後十分に伸びシロがあると言う期待感もあります。演奏後にお話させて頂きましたが、非常に育ちの良いお嬢様と言う感じの素敵な方で、それが演奏にも反映されていたように思います。今回、予選から弾かれた曲は、プロコフィエフ・ブラームス・モーツァルト・ショパン・メトネルと多彩で、いろんな傾向の曲に興味を持ちながら、勉強をされている方だと言うことが伺われます。受賞はなりませんでしたが、今後の大きな成長が期待出来る逸材だと思います。今後更に研鑽を積まれ、成長されたお姿を、ぜひ次の舞台でお聴かせ下さい。楽しみにしています。
銀賞を受賞されたNo.10の土屋絵葉さんは、関西ではあまり馴染みの無いお名前だと思いますが、今月25日(土)に、東京芸術センター主催・「天空劇場」にてリサイタルをされるご予定となっておられます。なぜ過密なスケジュールを縫って、神戸のコンクールを受けられたのかをお聞き出来ませんでしたが、リサイタルの前にプロコフィエフの「風刺」を実際の舞台で弾いて置きたいと思われたのかも知れませんね。彼女の演奏は本選しかお聴き出来ませんでしたが、とにかく非常に珍しい「風刺」は、集中力に富む圧巻の演奏でした。これまでこの曲を聴いたことが無かったため、本選前にYou-Tubeで予習させて頂いた際、たまたまお聴きしたものが中川真耶加さんのものだったんですが、土屋さんは中川さんとお友達のようで、そんな繋がりもあるんですね・・・。その中川さんの直観的・直線的な演奏に比べ、土屋さんの演奏には曲を揉まれた跡が感じられ、少し柔らかく知的な側面が感じられました。演奏の良し悪しは良くわかりませんが、この曲を演奏したいと言う強い意志とご本人の納得感は会場に届いて来ていましたね。それに比べると「ダンテを読んで」はもちろんレヴェルの高い常識的な演奏でしたが、この日は無難に弾かれたようですが、ラストでは思わぬ崩れを見せてしまわれました。ラヴェルも大変趣味の良い演奏でしたが、リスト・ラヴェル・プロコフィエフと言う流れのプログラムに於いて、ラヴェルが「箸休め」のような位置づけだったのでしょうが、流れ的に少し違和感を感じました。一次からの選曲は、プロコフィエフ・ショパン・プロコフィエフ・リスト・ラヴェル・プロコフィエフとなっていまして、彼女のレパートリーの中心がプロコフィエフにあると言うことになるのでしょうか。どの曲でも技巧的には申し分ありませんし、各曲で聴かせて頂いた知的なアプローチは、彼女の人間性を表されているように思います。短い時間でしたがお話させて頂き、そのことを更に強く感じました。銀賞受賞に相応しい演奏でした。直近のリサイタルのご成功と、今後益々のご活躍をお祈りしております。
金賞を受賞されたNo.16 の北端祥人さんの演奏は、下でも書かせて頂きましたが、たまたま運よく一次予選でお聴き出来たんですが、その時も素晴らしいと感じましたし、本選の演奏後にも抜けて素晴らしいと言う感想を書かせて頂きました。本選のリストのソナタは圧巻の出来で、怖がらずにご自身の想いのままを鍵盤に込められ、それが実際に音・音楽として表れていたと思います。聴いている側とすれば、構造が良くわからない長大・難解な曲で、「まだ終わらないの?」と言う思いになりかねないんですが、彼の演奏からは「退屈」と言う言葉は見つからず、いくつかの主要なモティーフの回帰ごとに、常に新鮮さ・懐かしさのようなものが感じられたと言うことだけでも、素晴らしい演奏だったと言えるのではないでしょうか。多少叩きつけるような傾向の個性的な打鍵ですが、それが決して単調に陥らず、2曲目に弾かれた「イスラメイ」でも、技巧的にもケチを付けるような場面は無く、中間部で出て来るファンタジックな主題の表出もとても素敵でした。彼がこのコンクールで弾かれた曲ですが、バッハ・ショパン・バルトーク・リスト・バラキレフと全て異なる作曲家でエントリーされていまして、そこからも彼のレパートリーや見識の広さ、そして自信と言うものを垣間見ることが可能で、そこもこのコンクールの主旨のひとつでもある「レパートリーの広さの披露」と言う重要な観点に当てはまっています。総合的に見ても、アマチュアの私とプロの審査員の方々の意見が一致したのも強ち偶然では無く、彼の金賞受賞は当然の結果だったのではないでしょうか。会場でお話させて頂き、お名刺まで頂戴し、ありがとうございました。とても折り目正しいお人柄で、人間的にも尊敬出来る若者です。ドイツ留学から帰国されたばかりだったでしょうか・・・。今後益々のご活躍をお祈り申し上げます。
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出場者の皆さん、お疲れ様でした。
公式サイトでは18時頃に結果がアップされるようですが、一足早く、こちらでお知らせします。
金賞:No.16 北端祥人さん
銀賞:No.10 土屋絵葉さん
銅賞:No.24 渡辺仁美さん
招聘賞:No.2 村田孝樹さん、No.5 矢野百華さん、No.9 藤田菜央さん、No.12 西恵里夏さん、No.14.大坪健太さん、No.19 宋??さん(聞き取れませんでした)
皆さん、おめでとうございます。演奏について感じたことは、また後程書かせて頂きます。
4/3
今日は有給休暇を取って、将来有望な若いピアニストたちの奮闘ぶりに立ち会って来ました。本選と言うレヴェルになると、顔見知りの方も多く、書き難いですね・・・。
明日、会場で結果発表になるんですが、今日は簡単な感想と、個人的な予想だけ書かせて頂きます。詳しい演奏の感想は、明日の午前中に書くことが出来るかどうか・・。
抜けて素晴らしいと思った方は、16番の男性の方です。恐らくこの方が金賞かなと・・・。弾かれる音楽のスケールがとても大きく、全体的に素晴らしい演奏で、大変感銘を受けました。ご本人が出したいと思う音が、その通りストレートに会場に響いて来ていましたよね。一次予選でお聴きした時と同じ感想のままです。
全体的なレヴェルが高く、二番手は数人が横一線と言った感じで、あとは審査員の好みと言うように思います。演奏順に、24番・12番、10番、9番、5番、14番の6名の方。この6名の方の中では、恐らく「ダークホース」的な位置づけになるのでしょうが、個人的に9番の方に最も高い評価を付けさせて頂きました。全体的に地味目で、決して派手さはありませんが、弾かれるピアノからにじみ出る何とも言えない人柄を感じさせる「味わい」が魅力的な方ですよね。ああいう体験は、これまでこのコンクールを聴かせて頂いて来た中では、そうそう感じたことがありません。装飾音符やターンなど、小さいフォントで書かれている音符をとても大事にされていたのが良くわかり、それがああいう味わい深い音となって聴こえてきていたのかなあと思います。24番の方はこのコンクールでも常連の方で、随所でツボを押さえた堅実な演奏、12番の方は、かなり「粘度」を感じる演奏でした。「幻想曲」の第1部はとりわけ素晴らしかったですが、それ以降は、音楽的な充実度合が期待した程では無かったような感じだったでしょうか。10番の方は、全く傾向の異なる3曲を並べて弾かれましたが、幾分プログラムとして散漫になりかけたような気もしますが、非常に珍しいプロコフィエフの「風刺」を集中力に富む演奏でお聴き出来たことは大変得難い体験でした。5番の方は常に常識に適った表現で、安定した演奏をお聴き出来ましたが、頂いたプログラムに書かれていない曲(シューマンでは無く、ラフマニノフのソナタ・・・)←これは大きな私の勘違いです。すみません・・・。その曲ですが、時間的に仕方ないとは思いますが、コンクールで曲の抜粋を弾かれるのは、あまり感心しないんですよね・・・。14番の方は人間味あふれる温かい演奏をされる方で、個人的には好みなんですが、同じようなパッセージで繰り返しミスタッチを重ねられるのは、コンクールでは大きく減点になってしまいますし、リストのソナタで集中力を欠く場面が散見されたのも残念でした。9番の方に加えて、上に挙げさせて頂いた5名の方の中から、上位の賞を採られる方が出て来るように思います。それ以外の方ですが、19番の方は、「展覧会の絵」の演奏はミスが多かったと言うよりは、少し「雑」でしたね。音楽を演奏する上で大事な「曲を構築して行く」と言う過程にも若干の抜かりが感じられました。2番の方は良く弾けていたと思いますが、全体的に淡泊で、幾分「教科書的」で、音色的に物足りない印象でした。以上、あくまでも個人的な感想ですので、それをご承知おき頂きながら、ご覧くださいね。
3/28
いろいろ予定があり、第一次予選は土曜日の第1部しかお聴き出来ませんでした。事前に提出されている録音で弾かれている曲と全く同じ曲目を、この第1次予選で弾かれると言うことになりますので、この日出場された皆さんの演奏は事前に聴かれて「合格」されている訳ですし、第1次予選は「確認作業」と言うことになるのでしょうね。
13番から18番までの6名の方の演奏を楽しみにしていましたが、残念ながら、13番・15番の方が棄権され、4名の方の演奏をお聴きすることになりましたが、この部では、16番の方の演奏が特に印象に残りました。選ばれたショパンの練習曲op.25-6は最高に難しい曲として知られていますが、この曲から「ニュアンス」が感じ取れたのは素晴らしかったですね。続くバッハも、和声表現の質が髙く、発音を含め如何にもバッハらしい良い演奏に聴こえて来ました。この方は、二次予選を経て本選に出場されると思いますので、結果が楽しみです。他の3名の方ですが、皆さん大変に緊張されておられたご様子でした。14番の方はミスタッチの多さが残念でしたが、詩情豊かに表現されたリストは楽しめました。人数にも拠るんでしょうが、本選に出場されるかも知れません。17番の方は音・音楽の線が少し細いような感じで、非常に難しく「器」の大きいリストのバラード第2番からは、その音楽の本質はまだ十分に聴かれなかったと言う印象、また、18番の方は、ショパンで大きく失敗してしまいましたが、ドビュッシーでは立ち直り、雰囲気のある音楽を聴かせて頂きました。
その後、主催者発表の結果では、聴かせて頂いた4名の方皆さんが、第2次予選に進まれたようです。


