2014/4/20 桑 早穂子 ピアノリサイタル | 音楽と競馬、思ったことを書いて行きます





昨年の日本ピアノコンクールでの演奏で「衝撃」を受けた桑早穂子さんのピアノを聴きに、とても楽しみな思いを胸に伺いました。

サブタイトルが「音楽の旅」と言うこともあり、ヴァラエティに富んだプログラムとなっていました。前半はドイツ・オーストリア系の曲目が作曲年代順に並び、非常に聴き応えがありました。今日改めてお聴きした彼女のピアノの特徴ですが、とにかく明晰・清潔で曖昧さが一切ないですね。自身の中で音楽を十分に受け止めてから咀嚼され、そして弾かれる音楽からは「真実」が聴かれます。デュナーミクも幅広く取られ、どの部分も非常に「音楽的」ですし、それらを受け止めるだけのテクニックが存在します。特に指先の力強さに優れ、音に「瞬発力」があるんですよね。鍵盤にタッチして出て来る音がとても良い感じで「コントロール」されているんです。自身の意のままに音を操れるピアニストとでも言いましょうかね。それらの特徴は、この前半のプログラムではとても有効で、しみじみと一音一音確かめるように弾かれたバッハは、特にフーガの部分では、くっきりと聴こえて来て欲しいと言う旋律線が見事に浮き上がって聴こえてきていましたし、ベートーヴェンの「テンペスト」では、楽章毎の性格が明確に弾き分けられており、大変感心しました。また、メンデルスゾーンの「厳格な変奏曲」は、単なる変奏曲と言った感じでは無く、折り目正しい演奏から、時折神々しく「宗教的」にさえ聴こえて来ていました。とても良く整った好印象の前半戦でした。

後半は、彼女お得意のラヴェル・リストの間に、初めてお聴きするスクリャービンと言うプログラム。この中で、スクリャービンですが、曲の性格もあるのでしょうか、曲への没入と言う点で幾分物足りないような印象がありました。幾分「整いすぎ」だったでしょうか。また、ラヴェルの「高雅で感傷的なワルツ」は、昨年お聴きしたラヴェルの「鏡」に比べると、曲の出来具合や性格もあるんでしょうが、曲と彼女の演奏スタイルがあまりマッチしていなかったかなあ、と感じました。聴く方としては、出て来る音から「行間」を読んでみたいような曲なんですよね。演奏を介在して、何かインスピレーションみたいなものを感じ取りたい、そんな感じの曲なんですよね。彼女の場合、自分の言いたいことを明確にお持ちの方なので、音自体でその全てを語りつくしてしまい、ある部分は聴き手に委ねると言う、まあ何て言いましょうか、そういう一種の「余裕」みたいなものがもっとあっても良いのではないかな、と思います。彼女自身とても「きちっと」されているという一方で、自分で音楽をコントロールし過ぎてしまっていて、指揮者みたいにザッツでは息を吸って音を弾かれるんですが、力んでそこまでしなくても・・・と言うような場面が、特にこの曲ではありました。曲や部分に応じて、もう少しリラックスして楽に演奏することも必要なのではないかなと。そうしないと集中力も続きませんし、疲れますよね。まあ全くの素人の感想ですけど・・。「メフィスト・ワルツ」は、昨年の名演を更に進化させたかのような「深み」みたいなものが聴かれました。この曲は完全に彼女の「十八番」になりましたね。とても素晴らしい演奏でした。


これだけ弾ける、そして聴ける若手ピアニストはそういらっしゃらないでしょう。更に更に高いところを目指して頂きたいですし、そういう思いもあって、素人らしく勝手気ままに書かせて頂きましたが、客席のお仲間達は、お世辞抜きで「凄い・・・」と感じながら聴いていらっしゃったと思います。桑さんはそれだけのピアニストだと思いますし、色んな意味で、更に素敵な演奏を目指して行って頂きたいです。短い時間でしょうけれど、近々にまた演奏をお聴き出来る機会もありそうですので、楽しみにしています。イメージを覆すような曲もお聴きしてみたいですね・・・。今日はありがとうございました。