2014/1/25 ベルリン・フィル八重奏団 公演 | 音楽と競馬、思ったことを書いて行きます





とにかく会場が広すぎますね。と言うか、この手の公演にしては客席数が多すぎます。2,000席でしかも満席でしょ・・・? せめて1,000席程度の中ホールぐらいでないと色んな意味で落ち着きません。繊細で音が薄く少ないピアノを含まない弦中心のアンサンブル公演で、常に客席が「ガサガサ・ゴホゴホ・バシャン」してしまっては、集中して聴くことが難しかった、と言うのが正直な感想ですかね。上の階から見えた光景ですが、寝ている方がとっても多かったですね。紙類を落とす「バシャン」の原因の多くは、これでしょうね・・・。

それにしても、奏者も過酷な公演日程ですね。宮崎→東京→西宮→岐阜→東京→新潟 と休みなしで、一日置いて京都→浜松→横浜→仙台 と回られるようです。流石にこのプログラムではアンコールは無いですし、各曲の第一楽章・提示部の繰り返し「なし」というのはまあ仕方ないんですが、姫路の音楽祭では全て繰り返しをしてくれていましたし、今回はこれも残念でした。

詳細はまた明日追記させて頂きますが、演奏はモーツァルトが最も秀演、次いでシューベルト、そして「ティル」と言った感じだったでしょうか。



以下追記。

「ティル」、やはり広い会場の聴衆も腰が落ち着かないのか、終始ワサワサとした双方温まらない雰囲気の中では、演奏は熱くなりませんし、各奏者から出て来る音符に「隙間」感を感じたりで、あまり濃密な演奏とはなりませんでした。こういう曲は、アンコールかプログラムの途中に演奏する方が盛り上がるし、所詮「編曲もの」ですから、もっと激しくハメ外すくらいに演奏してもらう方が楽しめますよね。樫本さん以外の奏者は大人しかったですし、「出来て当たり前」程度で演奏が終わってしまった印象で、そう言った意味で多少期待外れと言った感じでしょうか。旅の疲れもあるのでしょうか、ちょっと残念でした。

2曲目のモーツァルトのクラリネット五重奏曲。この曲を「ティル」と入れ替えて、頭に持って来ても良かったでしょうか。とてもオーソドックスで品の良い美演・秀演だったと思います。2ndvnが多少弱いと思って聴き進みましたが、後半のシューベルトで気が付きましたが、実際には決してそうではなく、この奏者は相当に室内楽に長けた方でしたね。詳しくは後述しますけど。各楽器とも出るべき場所でくっきりと音が聴こえ、クラリネットも多少控えめではありますが、趣のある音色と弦楽器との交差・アンサンブルはとても見事でした。

後半のシューベルト、奏者全員が揃った舞台となりましたが、これも趣味の良い演奏だったと思います。とにかく樫本さんのテクニックは跳び抜けていますよね。非常に演奏の難しい速いパッセージのスピッカート気味に弾く場所などでも他のパートとぴったりと合いますし、音程も完璧です。本当に凄いですよね・・・。同じようなパッセージやメロディを弾く場所でも、弾き方を明確に変えたり、左手のポジショニングや運指を変えたりして、決して2度同じようには弾かれないんです。音楽を楽しもう、聴く人にも楽しんでもらおうと言う姿勢の下、譜面をよく研究した上で惰性で舞台に立っていない方なんだなあとあらためて思いましたね。本当に良く考えておられますよ。赤穂・姫路でコンビを組んで長い息の合うヴィオラのグロスさんも良い味を出していましたし、加えて2ndvnのトマシーニさんの隠れた「粋な合わせ方」の技術には、見ていて思わず息を飲みましたね。私も以前弦楽四重奏で2ndvnを主に担当していたんですが、2ndvnと言うパートは曲に依ってもその立ち位置が難しいパートです。彼は終始控えめではありましたが、それは決して消極的だったと言うことでは無く、場所場所での役割を非常に良く自覚されながらアンサンブルをされていたと言うことです。その良い例が、刻みが続いたりする場所で、一音一音右手で弾く場所や弾き方、音符の速度(言い換えると、長さ)や強さを変幻自在に替えておられるんですよね。実際に出て来る音としてはそう顕著に「聴きとること」は難しいのですが、現場でそれを「観る」とそれが良くわかるんです。室内楽での2ndvn奏者の多くはそこまでされませんし、また出来ないと思います。一流と言われる方々でも、そこまで見事にされる奏者を拝見したことはあまりありません。特にこのロマン派のシューベルトではそれが顕著で有効でしたが、それはいろいろ室内楽の公演を観た中でもなかなかお目にかかれない光景で、こういうのを観ることが出来るのがライヴの素晴らしいところ、有難いところで、また、こういう奏者がいるからこそアンサンブル自体が締まりますし、演奏自体が映えるのだと実感しました。ただ、シューベルトのこの曲はやはりどう見ても長いですね・・・。楽想的にも部分部分で多少退屈ですし、流石に私の集中力も多少途切れ途切れとなってしまいました。(決して寝ていた訳ではありません!) 素晴らしい演奏を聴かせて頂ける上に、良い勉強をさせて頂ける有難さ。とても有意義な公演に巡り合えました。今年の姫路国際音楽祭の開催も楽しみですね。