「実はもっと最高で、より良い家庭環境にいくつもりが、なぜか君が『代わってあげるよ』と代わってしまったからでは?」

「?!そんな!?………まさか………自ら地獄を選ぶかよ!?そんなバカな!」


「この妖怪の親のもとに来たのは、誰かの身代わりってことさ。よくあるじゃないか、代わりがくるまで待っている伝説が。カマクラ伝説や、13番目の客、狼の役を受けた替え玉、孫に代わりを任せるおばあちゃん。伊達に民俗学を専攻していたわけではあるまい?」



「ちょ……そ、そんな………そこまでお人好しでないのわかるだろ。そもそも、そんな頼まれてもこっちから願い下げだよ!」


「果たしてそう?手招きされて美人がいる、美人とイチャイチャできる、暖かい素晴らしい充実した光の世界だと言われたら?まったくのウソだとしてもその誘惑に頭が傾くのでは?信じてしまえば断れる???君と代わった誰かさんは今頃、最高の人生、最高の名誉、最高の世界、明るい世界にいて、代わってもらい感謝してるかもよ・・・いや、お礼したのは君?」


「冗談ではない!もしそうなら、代わった誰かさんをボコボコにしてやる!修正してやるッッ」


「あながち、誤りではないかもしれんぞ。コレ見てみろ」


「な、なんだよ。コレは。子供の絵本?」


「うちの子供のだが、同じような話があるんだよ。見ろよって」


「タイトルなんだって?」


「タイトルは三本の金の髪の毛をもっている鬼。グリム童話だ。それに基づくと、君は最凶運の持ち主。船頭だ。船頭はずっと1人で代わりを待っていることになってる。そしてついに代わりが現れて、サオを握らせて自分は自由な世界にいく。船頭のほかに、障害物や見えない壁で困難の立ち位置に置かれている人々が現れる。障害を排除すれば解決するのだが・・・」


「!!では、妖怪の親から離れるには……」


「殺すか、潰すか、誰かの身代わりを探すか、船頭のようにサオを握らせるか」


「全部無理だろ。法律という重力に縛られてる」


「だから、兄弟におしつけて自由になるんだよ」


「無理だ。兄弟はいないし、すべて否定されて、すべて悪いやつ扱い、すべて奪われてる」


「手も足も出ないってか?万事休すってか?」


「誰か代わりはこないものか。妖怪の親が三途の川をさっさと渡ればいいのだが」


「三途の川を無理やり渡せよ!黙って見ていても、妖怪は三途の川は何百万億年も渡らんよ」


「それができれば、苦労はしない!それより、孫に代わりを任せるおばあちゃん??なんだよそれ?13番目の客?狼の役を代わりにする?なんのことか分からん」


「とにかく、代わりが現れるといいな」


「まったくだよ!」


以下はグリム童話から。

●三本の金の髪の毛●


昔、あるところに1人の貧しい女がおりました。


この女がある時、ひとりの男の子を生みましたが、その子は頭に福の皮(※1)をかぶって生まれてきました。


それで「この子は14歳になったら、王のお姫さまをお嫁さんにもらうだろう」という予言をした者がありました。


それからまもなくのこと、王がこの村にやってきました。

けれども、それが王だと誰一人気づきませんでした。


王は「この村で何か変わったことはないか」と、村の人たちに訪ねてきました。


村人たちは口々に言いました。


「最近、福の皮をかぶった子どもが生まれました。こういう子どもは、何をしても幸運に恵まれているのです。その子が14歳になったら、王のお姫さまをお嫁さんにもらうという予言もあるんですよ」


王はその予言のことをきいて、ひどく腹をたてました。


王は腹黒い意地悪な性格をしていたので、その子の両親を訪ねると、親切な人物を装い、こう言いました。


「どうだろう、あんたらは、貧しいようだが、その子どもを私にくれないかね。私が面倒をみてやるよ」


初めは断っていた両親でしたが、王が大金を差し出したので、『これは福の子だ。どっちみち、幸運に巡り合うに違いない』と考えて、とうとう承知して子供を渡しました。


王はその子を箱にいれ、川沿いの道までやってきました。すると、王はその箱を川の中へ放り込んでしまいました。


王は『これで、思いもよらないやつに姫をやらなくてもすんだ』と思いました。


ところが、その箱は沈むことなく小舟のようにプカプカ浮かび、王の都から2マイルほど離れた水車小屋まで流れて、堰に引っ掛かりようやく止まりました。


運よく、そこに立っていた粉挽きの小僧がそれを見つけて、素晴らしい宝物と思い込んでひきよせ、箱を開けてみます。


すると、どうでしょう。中には宝物ではなく、男の子がはいっているではありませんか。


小僧は、この子を粉挽きの夫婦のところへ連れていきました。粉挽きの夫婦は、子どもがいなかったので「この子は神の授かりものだ」と喜んで大事に育てました。


やがて、子どもは大きくなり、立派な若者になりました。

そんな頃、あるひどい嵐の日に、王がこの水車小屋にたちよったことがありました。


王は粉挽きの夫婦に、「この大きな子どもはおまえたちの子どもか」と尋ねます。


「いいえ、これは捨て子でございます。いまから14年ほど前に、箱にいれられて堰に流れつきましたのを、粉挽きの小僧が水から引き揚げたのでございます」と夫婦は答えました。


それを聞いて、その若者は王自ら川に投げこんだ福の子と気がつきました。そこで、「これ、おまえたち、この子どもに妃のところへ手紙を届けさせてはくれまいか。ほうびには金貨を二枚つかわすが」と言いました。


「かしこまりました」

夫婦はこう答えて、子どもに支度をするようにいいつけました。


王はお妃さまに手紙を書きました。

その手紙には「この手紙をもった子どもが城へついたら、ただちに殺して埋めてしまえ。それも、わしがもどらぬうちにすっかりかたづけてしまえ」と書いてありました。


男の子はこの手紙をもってでかけましたが、途中で道に迷い大きな森に入り込みました。


暗い森の中を彷徨っていると、ポツンと小さな灯りが見えてきました。

男の子はそれを目印に歩いていきますと、小さな家にたどり着きました。


家の中には、お婆さんがひとり暖炉の前に座っていました。

お婆さんは、男の子を見ると言いました。


「おまえはどこから来たのだい?で、これからどこへ行くんだね?」


「ボクは水車小屋から来たんです。お妃さまのところへ手紙を届けに行くとこなんです。だけど、森の中で道に迷ったから、今夜はここに泊めてもらいたいんです」と男の子は答えました。


「かわいそうに。お前は、泥棒のアジトに迷いこんだんだよ。今に皆が帰ってくれば、お前は殺されちまうよ」

お婆さんは言いました。


「どんなやつが来たって、ボクは怖くありません。ボクはもうくたびれちゃって、これ以上、ひと足も歩けないんです」

男の子はこう言うと、腰掛けの上に手足をのばして、そのまま寝込んでしまいました。


それから程なくして、泥棒の集団が帰って来ました。

アジトに勝手に上がり込んだことに腹をたて

「そこに寝ている小僧は、どこのどいつだ」

とお婆さんに尋ねます。


「ああ、そりゃあ、罪のない子どもだよ。森んなかで道に迷ってたから、かわいそうになって、わたしが一晩泊めてやったんだよ。お妃さまのとこに手紙を持って行くんだとさ」


さっそく、泥棒たちは手紙の封を切って、読んでみました。


すると、この子がお城へ着き次第ただちに命を奪えと書いてあるではありませんか。


情け知らずの泥棒たちも、これにはショックを受け、泥棒のリーダーはその手紙を破くと、新たな手紙を書くことにしました。


改編した手紙には「この子どもがお城へ着きしだい、ただちにお姫さまと結婚させるように」と書いておきました。


そして、翌朝に男の子が目覚めると、新たな手紙を渡し、お城への道順を教えて送り出しました。


城に到着した男の子から手紙を受け取ったお妃さまは、書いてある通り、すぐに婚礼の支度を言いつけ、お姫さまは福の子のお嫁さんになったのです。


福の子は心のやさしい美しい若者でしたから、お姫さまは心から満足して、ふたりで楽しく暮らしていました。


しばらくたって、王がお城へ帰ってきました。王は、予言とおりに福の子がお姫さまと添いとげているのを見て驚きます。


「これはどうしたことだ。わしは手紙に、こんな命令は書いていなかったはずだが!?」


お妃さまはその手紙を王に渡すと

「ご自分で、書いてあることをお読みになってごらんなさいませ」

と言いました。


王はその手紙を読んで、その手紙は自分が書いたものではなく、誰かにすり替えられたことに気づきます。


そこで、王は福の子に

「これとは違う内容の手紙はどうなったのか。それをなぜ持っていないのか」

と問いました。


「私は何も知りません。私が森の中で寝た晩にすり替えられたのかもしれません」

と福の子は答えるしかありません。


王は激怒します。

そして、この若造を追い払うための策を突き詰めます。

「そうやすやすと、お前にやられてたまるか。わしの娘と添いとげたければ、地獄から鬼の金色の髪の毛3本とってこなければならんのだ。わしの要求に応えれば、娘はお前の妻と認めてあげよう」


ところが、福の子は動じることなく

「お望みの金の髪の毛は、必ず持ってまいります。鬼なんか、怖くありません」

と旅にでました。


とある大きな町にたどり着き、その門番に

「お前はどんな職をこころえているか。どんなことを知っているか」

と尋ねられました。


福の子は「なんでも知ってるよ」と答えました。


「そいつはありがたいな」と門番は言い、続けて「実は、この町の井戸から湧き出ていた酒が突然出なくなり、水さえも出ないない始末なんだ。どうしたわけだか、教えてもらえないかね」と口にしました。


「教えてあげるよ。だが、私が帰ってくるまで、待まっていたまえよ」

と福の子は言いました。


福の子はさらに足を進め、やがてまたべつの町の門の前まで来ました。


ここでも、また門番が「お前はどんな職をこころえているか、どんなことを知っているか」と尋ねてきました。


「なんでも知ってるよ」と、福の子は同じように答えます。


「そいつはありがたいぞ。実は、この町に一本の木があるんだが、いままではその木に金のリンゴがなっていたのに、いまじゃ葉っぱ一枚ないありさまなんだ。どういうわけだか、ひとつおしえてもらいたいね」


「教えてあげるよ。だが、私が帰ってくるまで待まっていたまえ」

福の子はこう言い、また足を進めます。


そのうちに、とある大きな川のところにでましたが、この先に行かなくてはなりません。そして、この川には橋が架かっていません。


渡し船に乗ると、ここでも渡し守りが「お前はどういう職をこころえているか、なにを知っているか」と尋ねてきました。


「なんでも知ってるよ」

と福の子は変わらず答えます。


「そいつはうれしいな。オレは一年中、人を渡してばかりいるんだが、どうしてオレの代わりがこないのか、そのわけを教えてもらいたい」

と渡し守りが言いました。


「教えてあげるよ。だが、私が帰ってくるまで待っていたまえ」

と福の子は返しました。


この川を渡ると、いよいよ地獄の入り口にたどり着きました。

地獄の中は真っ黒で、すすけていました。


鬼はちょうど留守でしたが、鬼の母親が大きな安楽イスに腰掛けていました。


「なんの用だい」

と鬼の母親は福の子に尋ねました。


福の子は、この母親はタチの悪い意地悪をするように見えないことを感じとっていました。


「ボクは、鬼の金の髪の毛が3本欲しいんです。でないと、婚姻を認めてもらえないんですもの」

と福の子は打ち明けます。


「そりゃあまた、たいへんな望みだね」と鬼の母親は返します。


「鬼が帰ってきて、お前を見つけようもんなら、敵わないよ。それだと、お前が可哀想だから、助けてやるよ」

鬼の母親はこういって、福の子をアリに変えてしまいました。


そして、「わたしのスカートのひだのなかにはいこんでいな。そうしていりゃ、大丈夫だよ」と言いました。


「ええ。それはありがたいんですが、まだ3つほど知りたいことがあるんです。いままでお酒の湧いていた井戸が枯れてしまって、水もでないというのはどうしてなんですか。いままで金のリンゴがなっていたのに、いまでは葉っぱ一枚ないというのはどうしてなんですか。それから、一年中渡し船を漕ぐ渡し守りに代わりの人がこないというのは、どうしてなんですか。」

アリになった福の子は疑問をぶつけてみました。


「そいつは難しい問題だね。だがまあ、動かずにじっとしておいで。そして、わたしが金の髪の毛を3本ひきぬくときに、鬼がなんていうか、よく気をつけて聞いているんだよ」

と鬼の母親は言いきかせました。


やがつ日が暮れ、鬼が帰ってきました。


鬼は家の中へ入るか入らないうちに、家の中の空気の違和感に気がつきました。


「くさいぞ、くさいぞ、人間の肉くさいぞ。なんだか変だぞ」


それから、鬼は部屋の隅々まで探しまわりましたが、なにも見つかりませんでした。


それを見て、鬼の母親が鬼をしかりつけて言います。

「たったいま、掃除したばっかりだよ。せっかく、かたづけたのに、ごちゃごちゃにしてしまう。おまえの鼻にゃ、しょっちゅう人間の肉のにおいがくっついているんだよ。さあ、すわって夕飯(ゆうはん)でも食べな」


鬼は食事の後、疲れから頭を母親のひざの上にのせ、シラミをすこしとるように頼みました。しばらくすると、鬼は眠りにつきました。


その様子を見て、鬼の母親は金の髪の毛を一本つかんで、ぐいとひきぬいたのです。


「おう、いてえ。なにをするんだい。」と、鬼は叫びます。


「いまね、いやな夢を見たんだよ。それで、思わずおまえの髪の毛をつかんだのさ」


「いったい、どんな夢を見たんだい」


「ある町の市場の井戸の夢だったよ。いままでは酒がわきでていたのに、それが枯れちまって、水さえもでなくなっちまったんだよ。どうしたわけなんだろうね」


「へへん、あいつらにわかってたまるもんか。その井戸の中の石の下に、ヒキガエルが一匹いるのさ。そいつを殺ころしさえすりゃあ、また酒がわいてくるんだ」


鬼の母親は、また鬼の頭のシラミをとりはじめました。そのうちに、鬼はまたもや眠りこみます。


そこで、鬼の母親は、二本めの髪の毛をひきぬきました。


「うわあ。なにをするんだい。」

鬼は怒鳴りました。


「悪く思わないでおくれ。夢を見てやったことなんだから」

と鬼の母親は答えました。


「今度はどんな夢を見たんだ」

と、鬼が尋ねました。


「ある王さまの国に生えている果物の木の夢なんだがね。その木にはいままでずうっと金のリンゴがなっていたのさ。それが、いまじゃ葉っぱ一枚ないんだよ。どうしたわけなんだろうね」

鬼の母親は応えます。


「へへん、あいつらにわかってたまるもんかい」


「その木の根っこをネズミがかじっているからさ。そのネズミを殺ころしちまえば、また金のリンゴがなるようになる。だけど、このままネズミがかじっているようだと、いまにその木はすっかり枯れちまわあ。ところでオカン、もう夢を見るのはやめにしてくれよ。今度したら横っつらをぶんなぐるぜ」

鬼の母親はうまく鬼をなだめ、またシラミをとりはじめました。

そのうちに、鬼はまたもや眠りこんで、熟睡しだしたので、鬼の頭から3本目の金の髪の毛をつかんで、ひきぬきました。


鬼はとびあがり、暴力を振るおうとしました。けれども、母親はもう一度鬼をなだめて言いました。


「こんないやな夢ゆめを見たんだもの、しかたがないじゃないか」


「いったい、どんな夢を見たんだい」

と気になりつつ鬼は尋ねました。


「渡し守りの夢なんだがね。その渡し守りは、自分の代わりが現れないものだから、ぶつぶつ文句を言ってるのさ。どういうわけなんだろうねえ」


「へーん、バカな野郎だなあ。誰かがやってきて、向こう岸へ渡してくれといったら、そいつの手にサオを握らせちまえばいいんだ。そうすりゃ、今度はそいつが他人を渡さなけりゃならなくなって、そいつは自由になれるんだ」


こうして、鬼の母親は金の髪の毛3本ぬいたうえに、3つの問いの答えも聞き出すことができたので、いよいよこのバケモノをそのまま寝かせることにしました。


夜が明け鬼が出かけていくのをみて、鬼の母親はスカートのひだからアリをとりだして、この福の子をもとの人間の姿に戻してやりました。


「そら、この3本の金の髪の毛をやるよ。それから、おまえの3つの問いに鬼がなんて言ったか、よく聞いていたろうね」


「ええ、聞いてましたよ。よく覚えておきます」

と福の子は答えました。


「これで、お前を助けてやったわけだから、ぼつぼつ出かけたらどうだい」

と鬼の母親は言いました。


福の子は鬼の母親に、困っているところを助けてもらったお礼を言うと、地獄を立ち去りました。そして、なにもかもが、じつにうまくいったことを喜びました。


渡し守りのところまで戻ってくると、渡し守は「約束の返事を聞かせてくれ」と言ってきました。


「まず私を、対岸へ渡してくれ。そうすれば、どうしたらおまえが自由になれるかを教えてやるよ」

対岸へ着くと、福の子は鬼の言ったことをそのまま伝えてあげました。


「今度誰かがやってきて、向こうへ渡してくれといったら、その男の手にサオを握らせてしまえばいいんだよ」


福の子は足を進め、やがて実のならなくなった木のはえている町へたどり着きます。

福の子を待っていた門番に、鬼から聞いたとおりのことを話してやりました。


「その木の根っこをかじっているネズミを殺しなさい。そうすれば、また金のリンゴがなるよ」

これを聞いた番人は、お礼に金貨をつんだ2匹のロバをくれました。


そして最後に井戸の枯れてしまった町にきました。そして、ここでも門番に鬼が言った話を聞かせました。


「この井戸の中の石の下に、ヒキガエルが1匹いるんだよ。そいつを探しだして、殺しなさい。そうすれば、また前のようにお酒がいくらでも湧き出てくるよ」


門番はお礼を言って、ここでも金貨を積んだ2匹のロバをくれました。こうして、福の子はようやくお姫さまが待つ家に帰りつきました。


お姫さまは、福の子にもう一度会えたばかりだけでなく、何もかもうまくいったことを心から喜びました。


それから福の子は、王が要求した鬼の金の髪の毛を3本持って王の前に差し出しました。


王は、金貨を積んだ4匹のロバを見ては満足して言いました。

「さて、これで条件は整ったわけだ。わしの娘は、おまえの妻にしてよろしい。だが、このたくさんの金貨はどこで手にいれたのかね。じつにすばらしい宝ものだが」


「私はある川を渡りました。この金貨は、そこからとってまいりました。その川の岸には、砂のかわりに、こういうものがいっぱいございます」

と福の子は返しました。


「わしにもとってこられるかな」

王は欲しくてたまらない様子です。


「いくらでも、お望みなだけ。その川には渡し守りがおりますから、そのものに川を渡してもらいなさいませ。川向こうへ参りますと、いくつ袋がありましても、すぐいっぱいになってしまいます」

福の子は王に答えます。


欲の深い王は、大急ぎで出かけました。 


そして、あの川までたどり着き、渡し守を手で招き寄せると、対岸へ渡すように伝えました。


2人が対岸へ着いたと同時に渡し守は、王の手にサオを握らせると陸にとびあがって逃げていってしまいました。


王は、自分の犯した罪の罰としてずうっと渡し守りをしなければなりませんでした。


※1

子どもが生まれたとき、大網膜の一部がやぶれないで、そのまま子どもの頭に残っていることがあり、これを幸運の証だと考え、福の皮と呼んだ。