「浄華ー!」
20分程教室で待っていると、望が戻ってきた。
「悪りいな。遅くなって」
「別にいいけど。何してたんだよ」
何となく分かってはいるけれど、流れで軽く聞いてみる。
「正直知らないコだったんだけどそこそこ可愛かったし、とりあえずヤってきた」
「はあ!?告られていきなりか!?」
それはいくらなんでも早すぎるのではないだろうか。動揺していると望は軽い口調で訂正してきた。
「そんなに手ぇ早かねーよ。軽くキスしただけ」
望には彼女がいない時期がほとんどない。
彼女と急に別れたかと思えばいつの間にか別の彼女ができている。何でこんなに軽いのかは未だによく分からない。
「どーせ2週間も持たないだろ」
「お前酷いこと言うよな」
いつもそれくらいしか持たないので、言ってみれば正しい予想だ。
「大体お前は軽すぎるんだよ。もっとよく考えて返事しないと相手にも失礼だろ」
望は珍しく黙って少しの間考えているようだった。
「相手は俺のこと好きだって言ってくれてるし、俺のこと好きになってくれるような相手なら何となく好感が持てちゃうんだけど・・・変なのかな」
別に普通の考えなのかもしれないが、そんな考えにも浄華は苛立ってしまう。
(それならてめーは俺がお前のこと好きだって言ったら付き合ってくれんのか!?絶対ないだろ!!)
浄華は冗談を言うようにさりげなく聞いてみる。
「誰でもいーなら男でもいーのかよ」
冗談でも賛成するような返事を望んでいたのだが、やはりそう上手くはいかなかった。
「バカか!男相手とかマジ有り得ねーし!つーか気持ち悪りいだろ!」
「そ…そうだよな…気持ち悪いよな…」
少しだけショックを受けていることがばれないように笑顔で返す。
しかし、望は気にも止めていない様子で話題を切り替えた。
「彼女と言えばさ、浄華。ミキちゃんがお前のこと気になってるらしいよ」
「ミキちゃん…?」
何となく聞いたような名前だが、顔となかなか一致しない。
「ほら、横で髪束ねてるコだよ。何かやたらお前のこと聞いてくるし、お前今空いてんだろ?考えてやれよ」
「・・・あー・・・」
こんな話をするのも初めてではないが、聞く度に虚しくなってくる。
好きな人に他の人と付き合えと言われるのは本当につらい。
「うん・・・まあ考えとくわ」
もちろん嘘だが。
それから二人は黙って歩き続けた。話が途切れたときはだいたいいつも望が話しかけてくるのだが、何故か今日はうつむいている。
それから、望は言いにくそうに話を切り出してきた。
「なあ浄華・・・今日お前ん家泊まっていい?」
「え・・・?」
唐突に告げられた言葉に驚く。
「明日土曜日だし、夕飯ならテキトーに買ってくからさ。・・・ほら、勉強とか教えてほしいし・・・な?」
望はかなり慎重に言葉を選んでいるようだった。
きっと自分のことを気遣ってくれているのだろう。逆に気を遣ってしまうこともあるが、望が自分のことを考えてくれていると思うと温かいような気持ちになる。
「ごめん。ダメだったら別に・・・」
「ううん、嬉しい。おいで」
無意識のうちにふわりと微笑んで返事を返すのだった。
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