「浄華ー!」
教室で本を読んでいると、望が話しかけてきた。
「昨日どうだった?」
「・・・何が?」
「放課後残ってミキちゃんに数学教えたって聞いたんだけど?」
「あー・・・そのことか。うん、割と飲み込みが早い子で教える側としては結構楽だったぞ?少なくともお前よりは。」
「飲み込みが早くなくて悪かったな」
望は開き直ったような口調でつぶやく。
浄華には、望が勉強のことを知りたいわけではないことが分かっていたが、自分から離すのは気が進まなかった。
「ミキちゃんすごい喜んでたからさ。浄華もその気があるのかと思って」
ミキには悪いが、これ以上勘違いされるのは嫌なので、はっきりと告げる。
「ミキちゃんには悪いけど、あの子をそういう対象には見れない」
すると、望は少し驚いたような顔をした。
「何で?可愛いし性格も明るくていい子じゃん。試しに付き合ってみるとかもダメ?」
「好きでもないのにそういう関係は持ちたくない。そんなことして一番傷つくのはあの子だろ?」
好きと言われれば簡単に付き合い始める望には理解できないかもしれないが、自分の考えも分かってほしい。
「へー。お前何かいいやつだな。俺とは正反対。あ、でも今のは本人に言うなよ。女の子って傷つきやすいし」
「・・・分かってるよ」
話はもう終わりかと思っていたら、望は唐突に尋ねてきた。
「お前、好きな子いねーの?」
「はあ!?」
そんなことを聞かれるとは思っていなかったので、驚いて裏返った声が出てしまう。
その反応で、望は答えを読み取ってしまった。
「あ、やっぱりいるんだ。誰だよ?教えろ」
「し、知るか!」
誤魔化しても望はしつこく聞いてくる。何とか相手を聞き出そうと必死だ。
「いーじゃん。親友だろー?同じクラスの子?・・・じゃあせめて、俺が知ってる子かどーか教えて?」
あまりにしつこく聞いてくるので、半ばやけくそで答えてしまう。
「あーもう!お前が一番知ってるやつだよ!」
望はさっきより驚いた顔をして、必死で相手を特定しようとしている。
「俺が一番知ってる子?今まで俺が付き合った子かな・・・それとも・・・あ!」
望が急に閃いたような顔をするので、思わず身体がぎくりと動く。
しかし、答えは拍子抜けするようなものだった。
「もしかして自分!?お前ナルシストかよ!」
望は浄華を見ながら笑っている。
浄華はばれなくてほっとしている自分、なのにがっくりとうなだれている自分がはっきりと分かってしまうのであった。