「・・・あ・・・・・・」

 目が覚めると横に綺が寝ていた。そして昨日のことを思い出す。

(そうか・・・昨日綺と・・・)

 綺を起こさないようにベッドから抜け出すと、テーブルの上にたたんで置いてある服を着て洗面所まで行った。

 水で洗った顔を鏡でじっと見てみると、多少顔色が良くなっている気がする。

(もう望のことも忘れられるかな・・・)

 そうできたらいいと思いながら、台所に向かい、朝ご飯を作ろうとしていると、家のインターホンが鳴った。

(誰だよこんな早くに・・・)

 とは思ったものの、時計を見ると既に10時。普通の人は活動を始めている時間だ。

 インターホンの受話器を取って相手に話しかけると、聞き馴れた声が聞こえてきた。

「どなたで・・・」

「浄華!!」

「!?」

 画面に映っているのは目の色を変えた望だった。

「入っていいか!?」

「えっ・・・」

  寝室では綺が寝ている。何も着ずに。

「俺が入ると都合でも悪いのかよ!?」

「わ・・・分かった。今鍵開けるから入れよ」

 玄関へ行く前に寝室のドアだけ閉め、望を部屋へ招き入れた。

 寝室が気になりつつ、リビングのソファーに座らせる。

「えと・・・コーヒー淹れてるんだけど飲む?」

「いらねえ」

 相当気が立っているらしい。いらないとは言われたものの、一応カップにコーヒーを注いで差し出した。

「それで・・・その・・・今日はどういった用件で・・・?」

「・・・つい最近までは用がなくても来たらフツーに入れてくれてたのにな・・・」

 望の言葉が意外に胸に突き刺さる。

 あの日以来望が自宅に来たのは初めてだ。

「俺さ・・・この間のこと話そうと思って来たんだ。確かに怖かったけど、お前は大事な友達だから、あれはもうなかったことにして欲しいと思って」

「え・・・あ・・・ホントに・・・?」

「・・・でも、その前にひとつ聞いておきたいことがある」

「な、何・・・?」

「・・・お前昨日の夜何してた?」

 一瞬、身体が震えた。素直に言っていいのか。いいわけがない。

「ど、どういう意味・・・」

「実は昨日の7時頃、話そうと思ってマンションの前まで来たんだよ。そしたらここの部屋に高校生くらいのヤツが入るのを見たんだ。しばらくしたら出てくると思ってマンションの前の公園で待ってたんだけど、一時間経っても二時間経っても出てこないから、もしかして、と思って・・・」

「お、おい!友達家に呼ぶことくらいお前だってあるだろ!」

「今までの俺だったらそう思って出直しただろうけど・・・でも、お前は男相手でも平気なヤツだって分かっちゃってるし、相手は誰でもいいみたいだから、そういう相手が一人や二人いてもおかしくないと思ったんだよ」

 望の台詞の一部が妙に引っかかる。

「誰でもいい?誰でもいいならお前なんか抱くか!」

 思わず口から出たことが望の気に障ったらしい。望はすごい勢いで噛み付いてくる。

「お前なんかってなんだよ!嫌々抱いたとでも言うつもりか!?」

「そうじゃねえよ!そんなんじゃなくて・・・」

「は!男らしくねえな。はっきり言えば?何、まさか俺のこと好きなわけ?」

「!」

 頭が真っ白になり、それ以上言葉が出なくなる。

 からかうつもりで言ったらしい望は浄華の反応に急に深刻な顔になった。

「え、お前マジで・・・」

「浄華ー、誰か来てんの?」

 何の前触れもなく寝室から綺が出てくる。

 望は急に現れた綺の姿に驚いていたが、浄華は今の状況を打破するにはどうすればいいのか考えるので精一杯だった。





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